齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

異常に社会的支配傾向の高い国、日本

犬が犬を喰らう国

 

社会的支配傾向(Social dominance orientation, SDO)という比較的最近の心理学のスケールがある。

 

簡単にいえば、特定の集団が他の集団を支配することを良い、好ましいと考えるような態度のことである。そして統計によれば、日本は社会的支配傾向が異常に高いみたいだ。

 

生きづらい不平等な社会を生みだしているのは、まさにこのSDOが関係しているのではないか。

 

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社会的支配傾向とは何か

他者との関係を支配―被支配の序列でしか築けない人

 

身近でそういう人は珍しくはないだろう。

 

少し前に流行った「マウンティング女子」という言葉は、SDOの高い女性のことを示している。

 

先に述べたとおり、高SDOの特徴は「少数の集団が他の多数を支配すること」に対して肯定的な態度をとることにある。

 

つまり「勝ち組が負け組を支配することは正しい」というような態度である。

高SDOの人格の特徴① 自己中心性

ビッグ・ファイブと関連した調査では、高SDOは以下のような性格と関係がある。

 

まず新しい経験に対するオープンネス、協調性Agreeablenessが低いとされる。このような性格をもつ人は、自己利益を追求する傾向や自己中心性が強く、自分に甘い傾向がある。

高SDOの人格の特徴② 闘争的な世界観

また、タフな精神性 (Tough-mindedness、優しさ志向Tender-midednessの逆)を持つ傾向がある。つまり世界は権力と支配を通じて成功を手に入れる、高度に競争的な場所であると考える。Robert Altemeyerによれば、SDOの高い人はより権力志向であり、マキャベリアンである。つまり、「この世に善悪はなく、勝てば官軍」というような考え方。

 

高SDOの人々は階級を強化するような職業に就くことが多い。軍隊や警察はその一例である。

高SDOの人格の特徴③ 共感性の欠如

SDOは共感性と逆相関する。SDOと共感性は両極にあるとも言われる。つまり、SDOは利他主義や同情、哀れみといった感情の欠如を意味する。

 

他者の感情を理解できないことは、差別や偏見といった見方と直接的な関係がある。社会ダーウィニズムを信じるようなタイプかな。

高SDOの人格の特徴④ 政治的保守と差別感情

SDOは差別感情と深い関係がある。もっとも関係が深いのは女性の権利に対する否定的態度である。また違法移民や同性愛者への否定的態度とも相関が認められる。

 

上記の他、SDO傾向のある人は政治的には保守であることと明らかになっている。また、軍国主義や犯罪の厳罰化に対して賛同する傾向がある。

 

(上記はSocial dominance orientation - Wikipediaを参考にした)

SDOが異常に高い国、日本  

たまたま画像検索をしたら、国ごとのSDO傾向をまとめた論文があった。

 

Preferences for group dominance track and mediate the effects of macro-level social inequality and violence across societies | PNAS

 

高いとは思っていたが、まさかのSDO値が27カ国中最高日本は社会的支配傾向が異常に高い国である

 

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同論文より

 

この手の統計ではいつもそうだが、ドイツやオランダ、北欧は優秀であり、アメリカやイギリスは中程度、東アジアや東欧は低い傾向がある。それにしても保守的と思われるロシアやインドよりも高いのは意外だ。

 

この統計は、1996~2009年のあいだ、国連や世界銀行といった支配的な社会集団から得た27カ国のn = 41,824のSDOのメタ分析データに基づいているようである。

 

この論文においては、SDOと以下の項目について相関を見ている。

  • 「報道の自由の欠如」
  • 「幸福の不平等」
  • 「民主主義の欠如」
  • 「暴力衝突のリスク」
  • 「性的不平等」
  • 「社会的進歩性の欠如」

各々有意な相関性があるようである。

 

これらの各項目についてグラフを見ると、「SDOの割に日本は優れている」となりそうである。

 

しかしながら日本は「本音と建前」の国。メンツのためなら統計データが恣意的に操作されるので、あまりあてにならない(例:警察による検挙率の誤魔化し)。 

犬が犬を食らう国

現実的に日本のSDO傾向が高いかどうかは、先のデータだけでは不十分だろう。より広範の社会集団を対象とした正確な統計が望まれる。

 

しかしながら、高SDOと関連する項目は日本という国の社会的文化的特徴と非常にマッチするように思う。

 

つまり、日本は不平等で、報道の自由がなく、民主主義のレベルが低く、暴力衝突が存在する、性差別に満ちた、進歩性の低い国である。

  

そして高SDOの人格傾向を合わせると、この国は以下のようにまとめられる。

  • 強者が弱者を支配する不平等な社会
  • 権力志向で階級的な社会構造
  • 政治的な保守傾向
  • 軍国主義傾向
  • 犯罪者の厳罰傾向
  • 社会的進歩性の欠如
  • 表現の自由のなさ
  • 民主主義レベルの低さ
  • 競争的な世界観
  • 国民の利他主義、同情心、道徳心の欠如
  • わがままさ、自己中心性の高さ
  • 性差別、人種差別、同性愛差別

マスコミやネットで見聞きした日本ではなく、これが私たちが日々「体験」しているリアル・ジャパンだと思うが、いかがだろうか。

 

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