齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

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心理学的ネオテニー 未熟な人格と適応

見た目は中年、中身は子ども。

 

そういった人は現代ではめずらしくないと思います。身近に数人はいるでしょう。

 

大人になってわかったことは、未熟な大人が非常に多いという事実です。

 

これは実は、近現代の特徴なのかもしれません。

 

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by 村上隆

 

心理学的ネオテニー

 ニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事「Phychological Neoteny」を見てみます。

 

心理学的ネオテニーという概念を提唱したのは英ニューキャッスル大学のブルース・チャールトンです。

 

彼は未成熟さを「若年の態度青年期の後期まで持ち続けること」と定義しています。

 

いまの人類は精神的に成熟するまでに、かつてないほど長い時間をかけている。なかには永遠に心理学的に成人しないひとびともいるとチャールトンは言います。

 

まさにこれ、ウーパールーパー的な幼形成熟ですね。

 

チャールトンは人々の幼児化は「適応」に原因があるとしています。

未成熟の原因――激動の時代

私たちは激動の時代を生きています。

 

たとえば電話機からスマートフォンへの進化はかなり劇的なものがあります。少し前までは「クリックひとつで商品が届く」ということもありえなかった。仮想通貨という概念も存在しなかった。 

 

こういった変化の激しい社会において、私たちは適応しなければならない。こういった社会では、人格的精神的に融通の効く、可塑性のある精神を持つ人のほうが有利です。

 

仮想通貨で儲ける人がいる一方で、エクセルも使えずに四苦八苦するおじさんがいるわけです。

未成熟の原因――教育の長期化

もうひとつの例として、チャールトンは教育の長期化をあげています。

 

人間の肉体的成熟は15歳くらいに完成するわけですが、私たちは教育の長期化によって22歳や、場合によっては30歳近くまで教育を受け続けることになります。

 

教育はそれまで知らなかった新しい知識や概念を受け入れることにあります。このプロセスは明らかに精神および人格が未熟な人の方が向いています。

 

まあ新卒一括採用はある程度合理性があるわけです。

 

未成熟の原因――社会の役割の柔軟化

チャールトンは社会的な役割の激変が、現代では頻繁に起きているとも指摘します。

 

顕著な例は転職です。転職すれば、人はまったく馴染みのない土地へ移動することがあります。また、新しい社会的ネットワークを一から築き上げなくてはいけません。

 

あきらかにこの劇的な変化においつくためには、柔軟でフレキシブルな脳が必要です。

 

以上見てきたような理由でチャールトンは人々が未熟になってきているといいます。しかしながら、チャールトンは「現在では馬鹿にされている未熟な人々は、今後称賛されるかもしれない」とも言っています。

 

まとめ 「最近の若者は……」の正体

チャールトンの主張は、ネオテニー的なひとびとが有利に社会を渡っていける可能性を示しています。

 

未熟な人々は、新しい知識やシステムによく適応し、学歴は高く、転職などの社会的変化に柔軟に対応できます。

 

こういった性格によって、おそらく未熟な人々が社会的に上位に位置する可能性が高まっているのではないでしょうか? そして成熟した人々は社会的な底辺に多いことになる。

 

この傾向が示すことは、未熟な人々の子孫が繁栄し、成熟した人々の子孫が残されず、ネオテニー化がますます進んでいくということです。つまり「性選択(性淘汰)」が起きるのです。

 

おそらくこの過程はゆるやかに進行していたでしょうが、現代の社会では加速度が高まっているといえるでしょう。

 

「最近の若者は……」とぼやく中高年は絶えないわけですが、あながち間違った主張ではないのかもしれません。