齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

アナーキズムと私有財産

私有財産とは何か。

 

多くのアナーキストは「私有財産」を悪とみなします。

 

「アナーキズムの父」プルードンは、大胆にも「私有財産は窃盗であるProperty is Theft」と主張しました。

 

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私有財産は強者による弱者への搾取である――と主張したプルードン氏

 

私有財産が窃盗ってどういうこと?

アナーキストは私の貯金や家を奪うのか?

 

と怯える人がいますがそんなわけがないです。

 私有財産の廃止は、みなが自由に豊かに暮らすためなのです。

 

(ちなみにアナーキズムの中でも、個人主義的無政府主義者などは私有財産に賛成します)

私有財産とはなにか

Alan MacSimóin氏のThinking about anarchism : Private propertyを翻訳していきます。

 

「私有財産を廃止せよ」。

 

このスローガンは産業時代の幕開けからアナーキストによって用いられてきたスローガンである。他の適切な言葉を彼らが見つけられなかったことは哀れである。アナーキストの主張は既存の秩序の保護者たちによって曲解され、その意味するところは自分の家、クルマ、テレビさえ手放すことだと考える者もいる。

 

そうではない。私たちの個人的な所有とは無縁である。この「私有財産」が指しているのは、ただ生産的財産の私的所有についてのみである。

 

つまり工場や大農場、また製品を分配する鉄道や空港、輸送トラックなどを所有する「権利」を、だれにも認めるべきではないということだ。


アナーキストはそのような私的所有に反対する。なぜなら私たちは人々の搾取に反対するからだ。1990年代にアイルランドに搾取があったことを否定する者が、主に支配者のなかにいる。そのようなことは過去の悪い時代のものだと……そうなのだろうか?


過去の時代はもっとはっきりとしていた。農民は週のうち2日か3日は領主の土地で無給で働かなければならなかった。農民の労働の成果が領主に奪われていることは火を見るより明らかだった。

 

いまでは労働者は毎時間、彼らが働くほど賃金が支払われる。標準よりも賃金が低いものがいるかもしれないが、彼らは何時間も無賃で経営者のために働く必要はない。であれば、だれが自分たちは寄生虫を利するために働かなければならず、搾取されていると主張できるのか?

 

現在の経済システム――資本主義――のもとでは、商品は売られるために生産される。ほとんどの私たちは売るための製品をもたない。私達はしかし、別の売るものをもっている。

 

私たちは労働する能力、つまり労働力をもっている。賃金は私たちの労働力についた価格なのである。労働力がなければ何も生産されることはない。樹上のりんごさえそれが摘まれなければ価値を持たない。りんごを摘む労働力がそれに価値を与えるのである。そうしなければりんごは食べられないし、腐ってだれの役にも立たないものになる。

 

シンプルで簡単だ。私たちが働けば(もし職に就く幸運があれば)、私たちは価値を創造し、そのことで対価が支払われる。何が問題なのか? それは私たちの賃金はどれだけあがっても、決して労働の価値を満たすほどにはならないということだ。

  

私たちが賃金として得るものと、製品やサービスが売られたときに得るものとの差異は、経営者が利益と呼ぶものである。利益が彼らの収入源である。これが資本主義の基盤だ。つまり少数者が大多数の支払われない賃金に寄生して生きることである。

 

アナーキストは産業の所有権が経営者から奪われ、そのかわりに社会全体の財産となる未来のためにはたらく。その管理と運営は、労働者自身によって民主的に選ばれた団体に帰属する。

 

労働の世界は、Tony O'Reilly、Margaret HeffernanまたはMichael Smurfit(いずれも資産家のビジネスマン)のような富裕な有閑階級の利益を生みだすためにあるのではない。

 

何を生産すべきか、改善と新しいプロセスのために何を投資すべきか。そういったことは、何が社会的に有用かによって決まる。生産は少数者の強欲を満たすためではなく、人々の必要を満たすために行われる。それが私有財産の廃絶の結果である。

まとめ 私有財産の廃絶は豊かである

個人的に私有財産の定義があやふやだったので調べたのですが、Alan氏の記事でおおむね理解できた気がします。

 

彼は資本主義をうまく描いていますね。

 

資本主義では、働かざる者がもっとも豊かに暮らし、働くものは貧しく暮らすことを強いられます。

 

だれしもみな賃金労働が大嫌いですが、それはあたりまえです。自分は損をしてだれかを得させることだからです。

 

わかりやすい例は介護ビジネスです。

 

介護職員は過酷な長時間労働ですが低賃金です。

一方で介護施設のオーナーは被介護者に指一本触れることなく大金を稼いでいます。

それは彼が介護施設や設備を「私有」しているからです。

 

まさしくJ. S. ミルの「報酬は個人の労働と節欲とに比例する代わりに、むしろほとんど反比例をなす。最も少なく受け取る人こそ最も多く労働し節欲する」です。

 

資本主義は、「持つ者」が「持たざる者」を支配する階級社会です。もっともこの階級社会は国家の誕生からずっと続いていたのですが。

 

アナーキストが「私有財産を廃止せよ」と言うとき、だれもが「持たざる者」になれと言うのではありません。みなが「持つ者」となる社会へ移行しようということです。

 

そういった社会ではワーキング・プアは消えます。大富豪も消えます。働き者が働いた分だけ利益を得る「自然な社会」が実現します。

 

アナーキズムにおける私有財産の廃絶は、ひとびとが豊かに生活するためなのです。

 

 

と、うまくまとめましたが、「私有財産」はもう少し複雑な概念だと思うのでさらに調べていきたいです。