齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

犬好きと支配的人格

イヌが好きです。

イヌ好きの人が苦手です。

 

そんな人は多いのでは?

 

イヌ好きは支配的な性格の傾向がある、という研究があったので紹介します。

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Arugula and his dog by Raphael Kirchner

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イヌと人類 はじめて家畜化された動物

イヌは人類に最初に家畜化された動物だとされます。

 

考古学では少し前まで、最初に家畜化されたのは羊だとされていたと思うのですが。

家畜化されたのは以下のようです。

  • イヌ:BC. 11000~28000
  • ネコ:BC. 7000
  • ヤギ、羊:BC. 9000

Which animal did we domesticate first?より)

 

考えてみると、羊などの放牧にはイヌが必須です。イヌは人間による盗難やオオカミなどの捕食動物から羊を守りました。また、イヌは警備や狩猟、あるいは運搬にも重要な動物だった。

 

ちなみにネコは人類が定住し農耕が発達してから家畜化されました。食料庫の害虫やネズミなどを捕らえてきたことは有名です。人間が手なづけたというより、勝手に住みついて勝手に家畜化されたという説があります。

イヌ好きの人格的特徴

イヌ好きは支配的傾向があることが心理学的研究で明らかになったようです。これはイヌ好きとネコ好きの比較研究なのでネコとの対比も出てきます。

イヌネコの特徴

まずイヌ・ネコの特徴をおさらいしてみましょう。

  • イヌは集団で狩りをする。夜明けや日没に活動する。イヌは家族や主人がいないと心理的に憔悴する。人間と永遠に遊びたがる。
  • ネコは単独で狩りをする。主に夜中に活動する。ネコは人間と遊ぶことがあるものの、しばらくするとやめてしまう。

統計によれば、人々の74%が犬好きで、ネコ好きは41%とのこと。ネコ嫌いはたしかに多いイメージ。

イヌ好きは外向的 

テキサス大学のSam Goslingがビッグ・ファイブを用いて調べた結果が以下。

  • 犬好きは猫好きよりも15%外向的である。
  • 13%人気者agreeableである。
  • 11%良心的conscientiousである。良心的とは、自己規律的、仕事をしっかりとこなすといった性格。

というわけで、イヌ系の人は人当たりがよく誠実で強い義務感をもっていると言えます。

ネコ好きは神経質で「独身」

  • 猫好きは犬好きよりも12%神経質である
  • 11%オープンな性格である。オープンさは、芸術や感情、冒険的、奇抜なアイデア、想像力や好奇心などの経験と関与する。
  • 非慣習的である。

芸術家とネコは親和性が高そうです。 

  • ネコの所有者はイヌの所有者よりも1/3、単身者である可能性が高く、アパートやマンションに生活している可能性が倍である。
  • 未婚既婚男女のうち、独身女性がもっともネコを飼う確率が高い。
  • ネコを飼う人は内向的であり、比較的冷淡な性格である
  • ネコの所有者は支配性が低い。すなわち、強圧的で、攻撃的、執着的、自己確信的であることが少なく、臆病でシャイ、非攻撃的な傾向がある。 

ネコ好きは独身が多いようです。そして支配傾向が少ない。

支配性について

イヌはより服従的です。容易に訓練され命令に忠実です。

ネコは反対的に、独立的で行動が操作されにくい。

支配傾向のある人がイヌを好むことは直感的に受け入れやすいことです。

 

近年の研究では「支配性」を4つに分類し、より正確に人格上の差異を調べているようです。

  • 社会的支配志向性」……集団に階級があることを好ましいと考える。
  • 対人的支配」……他者に対して強制的、攻撃的にふるまう。ある個人が他者を導き、従わせるべきだと信じる。
  • 競争性」……他者に自分の優位性を見せつけたがる人である。他者と競争することで満足を得る、といった人々。
  • ナルシズム」……過大な自己評価。「私は特別な人間だと思う」「私は偉大な人間になると思う」といった考え方。

このうち、犬好きの人々は「社会的支配傾向」が高く、「競争」において高かった。しかし「対人的支配」と「ナルシズム」とは関係がなかった。

 

あきらかにイヌ系は社会関係が相対的ランクによって構造化されていることを好む。だから彼らはイヌが彼らに服従することを喜ぶのだと指摘されています。

Do Dog People and Cat People Differ in Terms of Dominance?より)

社会的支配指向性と権威主義

もう少し進めてみましょう。

 

社会的支配傾向を持つひとは、法律や社会規範を守る傾向は強いものの、攻撃性や自己中心性が高く、自分よりも下位の集団に対して非同情的であるとされます。(Bègue et al., 2014)

 

また極右思想の支持者はイヌ好きが多く、それは権威に従うことが良いことだと考える傾向があるからだとされています。そういえばヒトラーも犬好きだった(Blondi - Wikipedia)し、ムッソリーニも同様。そしていずれも猫嫌い。

 

単純に考えれば、イヌ好きは権威主義的傾向があると考えてよいと思います。

補遺:イヌとネコを一緒に飼う人は?

Stanley Coren氏によれば、イヌとネコを一緒に飼う人はイヌだけを飼う人と性格が似ている。つまりネコだけを飼う人と、イヌ・ネコ一緒に飼う人の性格は似ていないとされます。

 

また、ネコを飼う人はイヌを拒否する傾向があります。ネコを飼う人に「もし十分な環境が整えられ、同居者の反対がない場合、子犬をプレゼントされた。あなたは子犬を飼うか?」と聞いたとき、68%が飼わないと答えた。逆の場合、イヌの所有者が子ネコを飼うか尋ねられたときは70%が飼うと答えた。 

まとめ イヌ好きは支配的で競争的

イヌ好きは社会的支配志向性を持ち、競争的です。

 

イヌ好きは集団間の支配関係――「タテ社会」を好ましいと考えます。優秀な集団が劣等な集団を支配することは良いことだと。

 

したがって、イヌ好きは競争が好きです。競争は他者を打ち負かし、自分の優位性を示すことだからです。

 

また、イヌ好きは異質な存在や新しい経験に対して不寛容です。このことはいじめやコンフォーミズム、差別感情と関係する可能性があります。

 

もっとも「イヌ好きは差別主義者だ」などとは現段階では言えません。より実証的な研究が待たれます。

イヌは支配のはじまり? 

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GODを裏返すとDOGになる(意味深)

 

自分がなぜイヌ好きが苦手なのかわかった気がします。

 

「No gods, No masters」のアナーキズムとイヌ好きはどうもミスマッチなようです。イヌは好きですけど。

 

イヌは人類史において非常に重要な鍵です。

 

もしも初めて家畜化された存在であるイヌがいなかったら? 植物を家畜化する農耕(=文明)は存在せず、人間を家畜化する奴隷制や資本主義も存在しなかったかもしれません。

 

もう少し、「イヌと文明の関係」を調べてみたいです。