齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

齟齬

お知らせ:mikuriya-tetsu.comに引っ越しました

無政府主義と共産主義の違い

無政府主義と共産主義の違いは、簡単なようで難しい

 

無政府主義と共産主義の目指す社会は似ています。

いずれも目指しているのは階級のない、完全に平等な社会。

 

資本主義と無政府主義は敵対しますが(アナルコ・キャピタリズムはアナーキズムではない)資本主義と共産主義は実に相性がいいのです。

 

たとえば無政府共産主義ancomという思想があります。提唱者はクロポトキン。みんなが大好きエマ・ゴールドマンもancomでした。

 

他、Murray Bookchin、Alexander Berkman、Errico Malatestaなど著名なアナーキストもancomを支持した思想家でした。

 

一方で、「共産主義は自由に反する」と拒絶するアナーキストもいました。

「(共産主義は)個人が集団に従属するという公理からはじまる、独裁的で、権威主義的で、ドクトリン的なシステムである。市民は国家に帰属する」プルードン

 

「私は共産主義を憎む。それは自由の否定だからである。共産主義は……必然的に国家の財産の集中で終わる。」バクーニン

What is Anarchist Communism? より孫引き)

 

実際のところ、共産主義と無政府主義って何が違うのか? という点を考察しました。

 

f:id:mikuriyan:20180924133638j:plain

Ancomは黒と赤の旗になる。

 

[:contents] 

無政府主義と共産主義の共通点

まず、共通点から。たくさんあります。

  • 完全な平等の実現――階級や搾取の廃絶
  • 無神論
  • 相互扶助に基づく民主的・自治的社会
  • 賃金ではなく社会的動機による労働
  • 生産手段の私有の廃絶
  • 国家や政府の廃絶 

共産主義って国家を否定するの? と思う人がいるでしょう。マルクスの考えは、全世界が共産主義化すれば国家は必然的になくなるいうもの。

 

ちなみにソ連と中国はいずれも共産主義ではありません。ソ連は国家社会主義です。今の中国はかなり複雑ですが、少なくとも経済的には資本主義です。

共産主義と無政府主義の違い

違いというほどの違いではないのですが、定義上の範囲が違います。

共産主義の特徴

共産主義は以下の社会を目指します。

  • 貨幣の廃絶
  • 生産手段(土地や工場など)の共有
  • 物品が必要に応じて分配される

「分配」とはひとびとの間の物々交換を意味します。Aさんが靴をつくって、Bさんがお米を作ってそれぞれが交換するような社会です。「共産党が全国民に人民服を支給する」ような暗ーい感じではありません……。

 

共産主義の実現には、プロレタリアート(労働者)によるブルジョア(資本家)の打倒、つまり革命が起きる必要があります。

 

資本主義は必然的に格差を増大させます。企業間の絶えまない競争によって、中小企業は淘汰される。その結果、超巨大企業を所有するごく僅かな資本家と大多数の労働者が生まれます。たとえば0.001%の資本家と99.999%の労働者というような社会になる。

 

このような社会では革命が容易ですし、資本家なしでも社会がまわることが明白です。そして労働者が支配する、労働者だけの社会が実現します(プロレタリア独裁)。

 

もちろん他の国は資本主義のままなので、共産主義化した国はしばらく他国と思想的・政治的に戦う必要があります。

 

しかしながら、最終的にはあちこちの国で共産主義革命が起きて全世界が共産主義化する。これがマルクスや共産主義者の考える「未来の歴史」です。 

 

ちなみにマルクスは「革命を起こそうぜ」と言ったのではなく、「歴史の必然として革命が起きる」と考えた人です。各々の意志や思想はあまり関係なくって、社会的条件の変化が人々を革命に導くということです(史的唯物論)。

無政府主義の特徴

無政府主義(アナーキズム)の原義は「ἀναρχία (anarkhiā)」つまり「ἀν- (an-, “not”), + ἀρχή (arkhē, “power, authority”).」です。

 

支配や権威の不在を意味します。ある個人/集団による他者/他の集団への強制はすべて悪だとみなされる。

 

無政府主義は右派から左派、個人主義から集団主義まで幅広いですが、共通するのは以下です。

  • あらゆる権威の廃絶

これだけ。

 

なので、無政府主義は共産主義とも相性がいいわけです。 

結局何が違うのか

アナーキストと共産主義は、理想とする世界がほとんど似ています。

 

ただその過程が違うようです。

 

共産主義はプロレタリアートによる革命と独裁を経て完成します。つまり資本主義の拡大と進行は共産主義の前提なのです。労働者が貧困や失業に苦しむことも革命には必要な段階だとマルクスは考えました。 

 

ある国で共産主義革命がおきたとしても、その国は自国の資本主義化を防ぐとともに、外部に共産主義を拡大させなければいけません。ここには強制や暴力が存在することは不可避です。

 

一方、多くの無政府主義者にとって国家や資本主義は平和な社会の前提(必要悪)ではありません。存在する価値はなく、ただちに廃絶すべき「悪」だとされます。

 

無政府主義者は反文明主義や環境主義(グリーン・アナキズム)、原始主義(アナルコ・プリミティヴィズム)など文明を退行させることを理想とする場合が多い。

 

これは「歴史を前進させる」共産主義とは真逆の考え方になります。

 

また、資本家vs労働者という単純な二項対立も無政府主義者は支持しません。軍隊や政治、国土を支配しているのは必ずしも資本家ではありません。

 

そして、共産主義の革命には先駆者(マルクスの主張するvanguard)を要求するのですが、この「先駆者」はどうしても権力を濫用しがちになるという批判があります。

 

なのでバクーニンは「どのような情熱的な革命でも、彼に絶対権力を与えてしまえば、一年以内に皇帝以下の存在になるだろう」と言っています。中国共産党にせよスターリン下のソ連にせよ、自国民の殺害(デモサイド)にあけくれる傾向があるのですが、権力が集中しすぎる問題はたしかにあります。

 

また、Ancomは共産主義はどこの国でも中産階級の知識人のものであり、民衆が自発的に、自分の本性にしたがって革命を起こさない限りは失敗すると考えています。

 

たしかに共産主義はレーニンにせよ毛沢東にせよ、個人崇拝の例が多く、それは宗教に近い盲従を民衆に強いることと変わらないともいえます。

終わりに

レーニン「共産主義者と無政府主義者は、十分の九は同じで十分の一は異なる」

 

調べていると共産主義と無政府主義は似ているが、根本的なところで違う、と思いました。

 

共産主義は理想状態の実現のためには権威や抑圧を利用します。これは多くのアナーキストにとって受け入れがたいことでしょう。

 

ネットで拾った画像ですが、共産主義と無政府主義は以下のような対極にあると書かれています。

 

f:id:mikuriyan:20180924122036j:plain

共産主義国家が全世界に行き渡ったのが共産主義(政府規模100%)、国家も政府もまったくないのが無政府主義(政府規模0%)

 

 個人的にはプルードンやバクーニンの主張に賛成します。

 

なんていうか、共産主義の理想とする社会は想像するだけで息苦しいです。各々の行動が監視され、管理されるような社会しか想像できません。

 

たしかに「平等」を追求した社会でしょうが、あまり自由はなさそうです。そして、自由がなければ平等はありえないのです。

 

とはいえ、アナーキズムでancomは極めて重要な思想。もう少し調べていきたいです。