齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

よき人生の鍵は「自己決定理論」にある

あなたのやり方で生きるくらいなら、自分の人生で死んだほうがまし。 Lauren Oliver, Delirium

 

今日は自己決定理論(Self-determination theory, SDT)について紹介します。

 

自己決定理論とは、健やかに楽しく生きるためには自己決定が必要だという考え方です。

 

シンプルにいえば、他人が自分の生き方を決定するような人生はクソということです。

 

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Dialogue by Lee Ufan

自己決定理論とは

SDTは内発的動機づけと外発的動機づけの比較研究から進化したもので、 Edward L. DeciとRichard M. Ryanによって発展した理論です。

 

比較的若い理論であり、現在も発展しています。

 

私たちが満足な人生を送るためには、

  • どのような目標を持ち
  • それが達成されるか

が重要ですがそれだけではありません。

 

目標達成の「プロセス」も重要です。

そこに焦点をあてたのがSDTです。

 

同じ目標に対しても、自分自身のやり方で達成したときの方が、厳しい規制があったり、やり方が決められているときよりも満足度が高い。

 

たとえば「大金持ちになる」というようなケースでも、自分自身の動機や方法によって達成したときの方が満足度、自己実現度が高い (Deci & Ryan, 2000)。成功した実業家の二代目はダメになることが多いのはそのせいかもしれませんね。

 

また、管理的で命令的なひとよりも、共感的で勇気づけてくれる人々に支援された方が成功率が高いと言われています(Koestner & Hope, 2014)。

 

そしてSDTの研究では、目標が各々個人の内発的なものであり、基本的な要求を満たす場合、その達成率が高いことが明らかになっています。

自己決定の三つの基本的要求

White、deCharmsらは、自己決定の根底には以下の三つの基本的要求があるとしています。

  • 自律性Autonomy
  • 能力Competence
  • 関係性Relatedness

 

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自律性Autonomy

自分は自発的に行動している、自分がしていることを自分が管理しているというような感覚のことです。

 

たとえば選択肢が多いほどモチベーションがあがることが明らかになっています。

 

Autonomyの定義は、辞書によれば「外部の管理や影響から自由であること」。「独立」や「自己統治」の同義語です。自律性と訳してますが、自分を律するというような意味ではありません。

 

褒めたり報酬を与えるような外的動機づけはかえって自律性を阻害することになります。たとえばその行動に対して外部が報酬を与えると、内的動機が損なわれることが多い。

 

以前「子どもに報酬を与えるとかえって関心を損なう」ということを書いたのですが、同じことです。

 

また、「締切」のような行動を管理制限する外的要因があると内的動機を損なうことになると言われています。良い作品を生みだす作家は締切を破るイメージが強いのですが、関係あるかもしれません。

能力Competence

自らの行動が効果的で、良い結果をもたらしたという感覚のことです。

 

自分は有能であり、物事に対して適切に対処できる――という感覚はだれにでも必要なものです。

 

たとえば人に予期せぬ肯定的フィードバックを与えると、モチベーションが上昇することが明らかになっています(Dice 1971)。

関係性Relatedness

他の人々と親密に結びついており、他者へ配慮しているという感覚のことです。

 

ひとは社会的存在です。自分の利益だけを追い求める存在ではありません。他者に共感し、集団の利益も考えることが人間の本性。

 

SDTは狭量なエゴイズムではなく、他者に配慮することを基本的な要求としています。

 

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What is Self Determination Theory? - YouTubeより) 

 

自己決定の要求が満たされると?

これら3つの感覚が、自己決定理論のベースとなる人間の基本的欲求です。

 

これらが自己決定によって満たされると人間には何が起きるのでしょうか。

Ryan, Patrick, Deci, Williams (2008)によれば以下。

  • 抑鬱の低下
  • 心身症の低下
  • 不安の低下
  • QOLの増大
  • 喫煙率の低下
  • 運動の増加
  • 体重減少
  • 血糖値の改善
  • 健康的な食習慣
  • 口腔衛生の改善

よき人生目標とは

SDTでは人生の目標をおおまかにふたつに分けています。

  • 内的願望:集団のため、次世代のため、個人的な発展のための目標を持つこと
  • 外的願望:富や名声、魅力といった目標を持つこと

研究の示唆するところでは内的願望をもつ人の方が健康、パフォーマンスや人生の満足度において優れているようです。

 

これは感覚的にも理解できることですね。

結論 人は自分の人生を自分で決定する必要がある 

「私は自分のしたいことをしている」

「これが私の選択したことだ」

 

こういった感覚が心理的な健康を生みだすということです。

 

現代社会では多くの人が、選択肢を与えられず、自分のしたくないことをしています。

 

ほんとうの自分の要求ではなく、他者の要求にしたがって人生を生きています。

 

自殺率が高く生産性が異常に低いどこかの国はひとびとから自己決定をひどく奪っているといえます。

 

他人の命令にしたがって生きることは、肉体的に生きていても精神的には死んでいるのと同じ。家族のため会社のため、神のため国家のためではなく、自分のために生きることが良き人生への最短ルートです。

 

当たり前のことが実証的に明らかになってきていると言えます。