齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

文明は奴隷制である

奴隷制は、文明への第一歩である。発展するためには、少数が良い暮らしをし、その他は悪くならなければならない。そうすることによって、少数が他者を犠牲にして発展することができるのである。

Alexander Herzen

 

初期国家は奴隷によって成り立っていました。

 

奴隷は鎖でつないでおかなければ逃げます。

 

「国外逃亡」が現代と比べて容易だった初期国家について、考古学者のJames C. Scottはこう言っています。 

 

初期国家の人口の大半は自由民ではなかった……彼らは国家に拘束された人々であった。……支配下の人々が国家の手から逃げ出していくことはまったくありふれた出来事であった……。国家の統治下に生きることは、納税、徴兵、賦役を課されるということであり、ほとんどの者にとってそれはある種の隷従的状態を意味した。……こうした負担が限界に達した時点で、人々は辺境もしくは別の国家にすばやく逃げていった。

 

f:id:mikuriyan:20180630235927j:plain

A Ride for Freedom - The Fugitive Slaves 1862 Eastman Johnson

 

初期国家において、人々はすんなりとクソ国家から逃げ出していました。 

奴隷制は廃絶されたか? 

こう言いたい人がいるかもしれません。

 

「少なくとも先進国においては奴隷制は廃絶されている。したがって文明と奴隷制はイコールではない」。先進国は「民主主義」であり、「平等」や「自由」が保障されているのだ、と。

 

そういう人は、現代が賃金奴隷制であるという視点が欠けています。マルクスが言ったとおり、現代の社会構造は労働の搾取によって成り立っています。労働の成果物を、利潤(や税金)という形で強奪しない限り、資本主義や近代国家は成立しません。

 

現代社会は、初期国家のように簡単に逃れられるわけではありません。労働者たちは、逃げずに戦う――「働くか、飢えるかWork or Starve」を迫られています。

 

現代日本ではブラック企業でクソみたいに働かされるプロレタリアートが多いです。彼らに「逃げ場」さえあれば自殺や過労死などせず、平和に野良仕事でもしながら生きていくことができたでしょう。

 

奴隷から鉄鎖は取り払われたが、見えない鎖が労働者を縛りつけている、というわけです。結局、労働者たちの大半は生きるために働くしかない「賃金奴隷」なのが現実です。

 

古代から現代まで――文明はつねに奴隷制でした。フランス革命や明治維新以降の近代社会でも変わらない。文明=奴隷制なのです。

文明は奴隷制である 

記者であり政治家、政治理論化であるウィリアム・ハーパーは200年前、次のように語っていました。

奴隷制度は文明の主要な原因である。

 

……非文明的な人間にとって普遍的な事実としては、彼は自分の存在を維持するため以上の労働をしようとはしないということである。労働はそれに習慣づけられていない人にとっては苦痛であり、人間の本質は苦痛を嫌うことにある。文明によるすべての訓練、助けと動機づけによっても、もっとも文明化された社会における個々人の労働への嫌悪は克服されていないことを私達は知っている。奴隷制度の強制それ自体は人間を労働に習慣づけることに向いている。それなしでは、文明の特徴であり本質であるところの、私有財産の蓄積、快楽や贅沢の味わいといったものはありえない。他者の労働を命令する権利を獲得したものは、未来のために蓄積し、備えることにより、文明の基盤が築かれた。……古代から現代に至るまで、地球上に人間が誕生して以来、文明を築き上げたすべての社会は、このプロセスを通じて文明に移行していった。(Pro-slavery ideologue William Harper, 1837 引用元

 

まとめ

文明は奴隷の上に成り立ちます。農耕社会がはじまってから、現代にいたるまでの1万年間、その主要な社会は、奴隷制によって成り立っていました。

 

結局、文明は悪、ということなのかもしれません。