齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

アナルコ・キャピタリズムはアナーキズムではない

無政府資本主義は無政府主義ではありません。

 

 

 アナーキズムにはたくさんの種類があります。

 

アナーキストは「国家を廃絶する」(より正確には、「支配関係を廃絶する」)ことを理想としていますが、その方法や理想とする世界の考え方によってさまざまな分派があるのです。

 

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(Anarchist schools of thought - Wikipediaより)

 

その中でも、強烈に違和感を覚えるのはアナルコ・キャピタリズム:無政府資本主義です。無政府「資本主義」?

 

無政府資本主義

 

アナルコ・キャピタリズムは、自由市場における私人の主権に賛成し、国家を廃絶することを主張する。アナルコ・キャピタリズムは過激な反国家リバタリアニズムと、個人主義的アナーキズムによって生まれた……。

 

現在、アナルコ・キャピタリズムはアナーキズム運動の一部となりえないと信じる潮流がある。アナーキズムは歴史的に、反資本主義的な運動であり、資本主義と定義上両立しない、という理由からである。(Wikipedia 同)

 

アナルコ・キャピタリズムは、アナーキストから「お前は違うぞ」としばしば糾弾されています。シンプルに「Ancap is a joke.」とか言われています。

 

資本主義は労働力の搾取によって成立します。搾取があるところには支配があるはずですが……。 

 
Thought Slime氏の Why Anarcho-Capitalists Aren't Anarchists!という動画*1より引用します。

 

アナーキズムはあらゆる不公正なヒエラルキーに反対する一連のイデオロギーだ。

Anは不在を、Archosは支配者を意味する。Yは……単語をかっこよくする。

 

資本主義は、次の3つの要素で分類化される経済システムである。

1.生産手段の私有、管理(これはヒエラルキーだ)
2.商品とサービスの市場における自由な交換
3.賃金労働者(これもヒエラルキーだ)

資本主義はクソだ。

 

アナーキストは国家を許されないものと考える。国家はつねに大量虐殺をするものだし、裕福な変態のために他のすべての人が犠牲になるからだ。


アナルコ・キャピタリストは、国家は市場を制御しようとするから許されないと考える。アダム・スミスの「見えざる手」が私たちを自由な楽園へ導くのを妨げるからだ(国家は資本主義が機能するのに必要なのだが)。

 

アナルコ・キャピタリズムはアナーキズムではない

生産手段の私有、管理

賃金労働制。

 

このふたつを前提とする以上、アナルコ・キャピタリズムはアナーキズムではありえません。

 

また、国家は資本主義に奉仕します。たとえば警察や軍隊は、「金持ちの変態rich perverts」を守るために存在します。

 

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国家を廃絶し、警察や軍隊を民間企業の手に委ねるとして、一般市民にとってその役割や機能は変わるでしょうか? 何も変わりません。

 

国家と資本家に虐げられる弱者が、より自由に強力になった資本家に虐げられるだけです。そういった社会を理想とするのは、アナーキズムではない。

 

結局、アナルコ・キャピタリストは「人間の自由」ではなく「資本の自由」を説いているに過ぎません。右派リバタリアンも同様の誤りを犯しています。

 

それにしても、なぜ「資本主義者」がアナーキストやリバタリアンの名前を主張しようとするのかが謎です。「資本主義」は、思想には成りえないからでしょうか。