齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

人間の本性は善である――基本的に

人間の本性は善か、悪か。

 

この問題は、数千年来問われ続けてきました。

 

孟子と荀子の「性論」は有名です。また、ホッブズとルソーのどちらに共感するか、は保守とリベラルの分水領でもあります。

 

単純化してみますと、キリスト教では人は存在するだけで悪とされます(原罪)。一方、ヒンドゥー教では人間の本質は善となります(梵我一如)。

 

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evil vs good by AndreySkull(DeviantArt)

心理学の研究では、人間の本性は……

そんなわけで、人間の本性は善か悪かという問題は、哲学的にも宗教的にもすんげー重大な問題なのですが、最近の実証的な研究では、人間の本性は善である、ということを示す報告があるようです。

 

発達心理学者のDavid Randが中心となって行った、イェール大とハーバード大の共同研究があります。

 

人間の「本性」を知るためには、より「早い」選択がどうなのかを調べればよい、というのがその手法です。人間の反応において、それが早いほど、本能的な行動になるのです。

 

すなわち、ある選択において協力的な判断が早いか、自己中心的な判断が早いか、ということを「囚人のジレンマ」などの実験を通じて調査します。

 

結果は衝撃的だった。すべての研究で、早い――つまりより本能的な――決定は高度に協力性と関連づいている一方で、遅い――つまり、より反応的な――決定は高度に自己中心性と関連づいていた。
The results were striking: in every single study, faster――that is, more intuitive――decisions were associated with higher levels of cooperation, whereas slower――that is, more reflective――decisions were associated with higher levels of selfishness.
(Scientists Probe Human Nature--and Discover We Are Good, After All - Scientific American)

 

つまり人は第一に、自分だけが得することよりも、人と協力することを選ぶということです。そんなわけで、人間の本性は善なんじゃないの? というのが心理学の答えのようです。

 

同じ研究を紹介した別のサイトの文章に私は惹かれました。

 

結局のところ、人類は地球の歴史からすればまばたきのようにちっぽけな歴史のなかで、たくさんのひどいことをしてきました。でも、もしかしたらそれは単に私たちの指導者によってなされてきたことで、私たちそれぞれの内心は、小さな例外はあるにせよ、みなやさしい心を持っているのです。少なくとも、科学はそう私たちに教えてくれます。

After all, the human race has done so many terrible things through out its tiny history worth only a blink of an eye in the planet’s eon time. But, maybe those are just the doings of our leaders, and at our very core, each of us, with small exceptions, we’re all kind at heart. At least that’s what science tells us.
Humans are wired to be good in nature, science findings prove

 

ほんとうにそうだなー、と思います。

人間の本性は善だと思うよ

私は人間の本性は善だと思っています。

 

もっとも、これは「基本的に」という条件つきです。サイコパスのような、「根っからの悪人」は存在します。救おうとしても救いようのない悪人がいることは否定できません。

 

もしかしたら、近現代の問題は、そういった少数の悪人が権力を掌握していることにあるのかもしれません。

 

 人類の歴史は血塗られた殺し合いの歴史として描かれます。まるで戦争が人間の本能であるかのようです。でも、だれが自分が死ぬ危険をおかしてまで赤の他人を殺したいと思うでしょうか。徴兵された兵隊さんは戦争に参加したかったのでしょうか。答えは自明ですよね。戦争なんて、ふつうの人は望まないんですよ(だれが戦争を望むのか - 齟齬)。みな否応なく飲み込まれただけで。この点から言っても、戦争や殺戮を好むのは少数の悪人のサガで、人間の本性ではなさそうです。

 

基本的に人は善なる存在なのでしょう。すなわち、人は自由であるほど善になります。反対に規律でがんじがらめにして、自由に考えることや、自由に行動することを制限すればするほど、人は悪に陥る可能性が高いということです。

 

人を教化したり、縛り付ければ秩序が実現するというホッブズ的な考えは誤りで、かえって人々の完全な自由への解放にこそ、ほんとうの平和や秩序があるのかもしれません。