齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

日本がアジアでもっとも進歩したのはなぜか

日本は、驚くほど成功し、次には驚くほど凋落している。

 

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「俺たちががんばったから日本は豊かになったんだ」というような発言を老人世代から聞くことがあるのですが、私はこの手の物言いが大嫌いです。

 

裏を返せば、「お前たちががんばらないから、日本は貧しくなったんだ」となるからです。「がんばればなんとかなる」精神はうんざりですし、今の日本人労働者の境遇はかつてよりもよっぽど悪くなっていることは少し考えればわかることです。

 

日本はなぜ繁栄して、なぜ今はダメなのか。

 

日本のことについて調べる際に、気をつけることがあります。国内の大半の学者はポンコツなのであてにしてはいけないということです。イェール大学卒の外国人サラリーマンに指摘してもらう方がはるかに有益です。

 

そんなわけで、「Martin Basinger氏の知恵袋」をのぞいてみましょう。

 

なぜアジアの国々の中で日本がもっとも発展したのか?

Why is Japan more advanced than all other Asian nations? - Quora

より。

この質問は、20年、あるいは10年前であれば正しかったかもしれない。しかし今では的外れだ。20年前にその質問を受けたとして回答しよう。

 

答えは、共産主義だ。彼らは大戦後、アメリカから近代化と文明の大きな贈り物を受け取った。

 

たぶん、詳細な説明が必要だろう。

 

この贈り物は、技術移転の形で与えられた(70~80年代、日本を豊かにしたすべての主要産業は日本企業が発明したものではなく、移転されたものだ)。彼らが受けとらなかったものについては、他国から盗んだりコピーした。日本はヨーロッパの「コピー経済」として知られている。なぜなら特許を盗んだり、むちゃくちゃに模倣したからである。

 

日本がコピー商品を売りさばくことを可能にしたもうひとつの贈り物は、アメリカの与えた貿易規制のゆるさである。アメリカを除いて、「悪なる日本」と本心から協力しようとする国はなかった。彼らはコピー商品をヨーロッパで売ることはできなかったし、その他の国では貧しすぎて売れなかった。だからアメリカは、彼らに米国市場への自由な自動車貿易という奇跡を与えた。アメリカは自らの自動車産業を潰すこととなり、それによって得られるものよりも多くを失っている。

 

それでは、なぜアメリカは大戦後に日本に良くし、近づいてきたのか? その答えは共産主義だ。第二次大戦後、アメリカの支配者は中国、韓国、ロシアの共産主義を非常に恐れていた。そして彼らはそれらの国々と戦争する場合、チェスの戦略として前哨基地が必要であると決定した。彼らがコントロールした国は日本だけだ。日本は戦争の際には単に完全に「壁」や「沈まぬ空母」として働く場所に位置していたのである。

 

しかしそのような「空母」は、米軍兵や兵器を支援するインフラが必要である――そしてインフラには金がかかる。だからアメリカは、空母を作るもっとも安くつく方法に決定した。それは日本人に支払わせることである。アメリカが日本に与えた特許や技術は、知的財産であったため実際のコストは非常に少ない。アメリカはまた、日本人が忙しく働く(そして裕福になる)ならば、彼らはいつの日か全体主義ファシズム的な社会構造を廃絶し、善良な国になるとだろうとも望んでいた。(望みは結局、無駄に終わったようだ――日本では古くからの邪悪な風習がいまだに強い力をもっている。いわゆる“政党”である自民党の裏の陰の部分では、日本会議という、危険なナショナリストセクト一党独裁が事実上行われている。)

 

アメリカの太っ腹な贈り物がなくとも日本が豊かな国になったと信じる理由はないだろう。日本が米国の支えるべき「有効的な東アジアの国」として選ばれたのは、単なる偶然だったのである。

 

(なんとなくデジャブだと思ったら、前に訳したこれととても近い感じだ。→日本の製造業はなぜ発展したか―反共の防波堤 - 旧齟齬

 

「反共の空母」――ネトウヨは「日本は韓国を近代化し、豊かな国にしてやったのだ」と言いますが、同じ理由で米国が日本を豊かにしたのかもしれません。

 

日本の経済成長は、なんらかの戦略や技術、あるいは日本人の努力や国民性によって奇跡の発展を成し遂げたのではなく、アメリカの戦略と投資に過ぎないのでしょうか。もしそうなら、冷戦終結以降の日本経済が勢いを失い、復活する兆しがほとんどないことも理解できます。

 

日本が絶頂にあったとき、「日本人論」が世界中を席巻し、ヨーロッパ型アメリカ型の経営ではダメだ、日本人型の経営をとりこもうという潮流がありました。

 

しかし、いまの私たちは日本型の経営が、単なる猛烈な搾取に過ぎないことを知っています。「縦社会」という名の人権軽視・職権乱用はあらゆるハラスメントの温床ですし、「企業への忠誠」は過労死やサービス残業の原因となっています。多くの先進国は訴訟リスクを抱える上に生産性を低くすることになるので、日本の経営モデルは完全に反面教師と化しています。 

 

一方で、中国の経済成長は「独力」であると言えます。10年ほど前には私たちは中国や韓国をさんざん笑ってきたのですが、今は韓国に賃金で抜かれています。中国>>>>韓国≒日本といった構図ができていますが、冷静に考えると本来はこれくらいのポジショニングが順当なのではないか、と思えてきます。