齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

左翼は偽善者のマゾヒストか

「みんなが嫌いな左翼」はどのようにして生まれるか?

 

私はいちおう極左の人間だが、いわゆる「左翼」には強い嫌悪感を抱いていた。ネット上を見ても、左翼が嫌いな人は多いように思われる。

 

例えば、私は大江健三郎や坂本龍一が嫌いである。

  • 年齢に見合わない精神的な幼稚さ
  • 社会的弱者を代表する正義のボク、という自己顕示欲
  • 本質的な問題解決には関心がなく、盛り上がればよいというような態度

 

また、いわゆる「反安倍」な人々やメディアにも辟易とする。問題の核は安倍という個人にあるのではないことは明らかだ。安倍首相が辞任したところで、何もかもがよくなるわけではないし、より一層悪くなる可能性だってある。

 

端的に言って、左翼は口ばかり動かしているが、目は閉ざしている。

 

これらの傾向は「左翼」全般に共通している、というのがテッド・カジンスキーの論である。

 

テッド・カジンスキーは、「左翼主義leftism」に強烈な嫌悪感を抱いていた。なぜ、「左翼」はダメなのか。左翼はダメになってしまうのか。ユナボマー・マニフェストから引用したい。

 

現代左翼の心理学

原文:washingtonpost.com: Unabomber Special ReportのTHE PSYCHOLOGY OF MODERN LEFTISMより。

 

6.私達はひどく厄介な社会に生きている。このことに、ほとんどの人が同意するだろう。この世界におけるもっとも気が狂っており、もっとも広がったマニフェストは、左翼主義である。左翼の心理学についての議論は、現代社会の一般的な問題の導入になりうる。

 

7.左翼とはなにか? 20世紀の前半期において、左翼は実質的に社会主義だった。今日では左翼の運動は断片化されており、だれを左翼と呼べばよいのか明確ではなくなっている。この記事では主に、社会主義者、集団主義者、「ポリティカル・コレクトネス」タイプ、フェミニスト、ゲイや障害者の運動家、動物権利活動家やそのようなものを指す。しかしこれらの運動に参加している人がかならずしも左翼というわけではない。私がここで議論したいのは、運動やイデオロギーというよりは心理的なタイプであり、関連するタイプの集合である。……

 

8.それでもなお、左翼の概念はいまだに明瞭ではないが、これにはいかなる処置も無効であるようだ。私がここで明らかにしたいのは、現代左翼主義の主要な原動力となっている漠然としたふたつの心理的傾向である。……

 

9.現代左翼の底流にあるふたつの傾向は、私達が「劣等感」と呼ぶもの、「過剰社会化」と呼ぶもののふたつである。劣等感は現代左翼の全体を特徴づけており、一方で過剰社会化は現代左翼の一部分を特徴づけているにすぎない。しかし、この一部分はかなり高い影響力をもっている。

劣等感

10.劣等感という言葉によって、私は厳密な意味での劣等感を指しているのではない。それに関連する特徴の全体的な範囲を示している。低い自己評価、無力感、抑鬱傾向、敗北主義、罪悪感、自己嫌悪、など。現代左翼はこのような感情をもっており(多かれ少なかれ抑圧されているが)、これらの感情は現代左翼の方向性を決める上で決定的なものである。

 

11.だれかが自ら(や自らのアイデンティティである集団)について侮辱しているとき、私たちは彼が劣等感や低い自己評価をもっていると解釈するだろう。この傾向はマイノリティーの権利運動家において明白である。彼がそのマイノリティー集団に存在するかどうかは関係ない。彼らはマイノリティーを侮辱するための言葉や、マイノリティーに関する発言に対して非常に過敏である。「ニグロ」「オリエンタル(アジア人に対する侮蔑語)」「障害者」「チック(ひよこ:若い女性に対する侮蔑語)」。これらのアフリカ人、アジア人、障碍者や女性を指す言葉は、もともと侮蔑的な言葉ではなかった。「Broad」や「チック」は単に女性にとっての「Guy」「Dude」「Fellow」に対応した言葉に過ぎなかった。否定的な意味合いは、活動家自身によって言葉に追加されたのである。動物権利活動家は、「ペット」という言葉すら拒絶して、そのかわりに「動物の仲間animal companion」という言葉に置き換えることまで主張している。左翼的な考古学者は、原始的な人々に対する否定的と解釈できる発言を取り除くために、どんな苦労も惜しまない。彼らは「原始的primitive」という言葉を、「文字のないnonliterate」という言葉に置き換えようとしている。彼らは自らの文化に対して原始的文化が劣っているとする事柄について、ほとんど偏執狂である。……

 

12.「ポリティカル・コレクトネス」にもっとも過敏な人々は、ゲットーの黒人や、アジア系移民、女性や障碍者ではなく、平均的には活動家の少数派である。彼らは何ら「抑圧された」グループに所属しておらず、むしろ特権的な社会階級に所属している人々である。ポリティカル・コレクトネスの拠点は、満足いく給与と、安定した雇用にある大学教授で、彼らの大部分は異性愛者の中産階級からアッパーミドルクラスの白人男性である。

 

13.多くの左翼は、集団の持つ問題に対する激しい自己同一感を持っている。弱さ(女性)、敗北した(アメリカ・インディアン)、避けられた(同性愛者)など、その他劣ったものと。左翼は、それらの集団を劣っていると感じる。彼らは自分がそういった感情を持っていることを決して認めないが、しかしそれは単純に彼らが劣っていることと、自分が劣っていることを同一化しているからである。……

 

14.フェミニストは女性が男性と同じくらい強く、有能であることに絶望的に不安をいだいている。明らかに、女性が男性よりも強く有能では「ない」という恐怖に彼らはうんざりしている。

 

15.左翼はなんであれ、強さ、善良さ、成功をイメージさせるイメージに対して嫌悪感を抱く傾向がある。彼らはアメリカを憎み、西洋文明を憎み、白人男性を憎み、理性を憎む。彼らがそれらを憎む理由は、明らかにほんとうの動機とは無縁である。彼らは西洋を憎むのは戦争好きで帝国主義的で、性差別的で自民族中心主義的だとか「言う」だろうが、社会主義国家や原始的な文化でそれらと同じ欠点が見つかると、左翼は自らに言い訳をし、最良の場合でも「しぶしぶと」それらの存在を認めるのである。彼らが「情熱的に」(そしてしばしば非常に誇張して)西洋文明の欠点を指摘するのに対して。よって、アメリカや西洋の欠点が左翼の本当の動機なのではない。彼はアメリカや西洋を、それらが成功していて強いから憎んでいるのである。

 

16.「自己確信」や「自己信頼」、「自発的」、「進取の精神」、「楽観主義」などの言葉は、リベラルや左翼の語彙のなかでほとんど役割をもっていない。左翼は反個人主義的で、集団主義志向である。彼は社会に対して、全員の問題を解決し、全員の欲求を満たし、全員をケアしてほしいと思っている。彼は自らの問題を解決する能力や、彼自身の欲求を満たす内的な自信をもつような人物ではない。左翼は競争という概念の反対者であるが、それは深い内面で、自分が負け犬だと感じているからである。

 

17.現代の左派知識層にアピールする芸術形態は、卑劣さ、敗北、絶望である。あるいは、合理的な計算がもはや何の成果ももたらさないかのように、理性的な制御を捨て去り、残されたのはその瞬間の感覚に身を任せることだけである。

 

18.現代の左派哲学者は理性、科学、客観的な現実を棄却し、すべては文化相対的であると主張する傾向がある。科学知識の基礎や、客観性の概念がほんとうに定義できるのかについて、深く懐疑することは可能である。しかし、現代の左派哲学者は知識の基礎を分析し、体系的に分析できるほど冷静な論理学者ではないことは明らかである。彼らは真実と現実に対する攻撃において、深く感情的にそれを行っている。彼らは自分の心理的必要からそれらの概念を攻撃しているのである。彼らの攻撃は敵対心のはけ口であり、それが成功する限りは、権力を引き出すために役立っている。

 

より重要なことは、左翼は科学や理性を憎んでいるということである。なぜなら彼らはある信念を真実(成功しており、優れている)と分類し、他の信念を虚偽(失敗して、劣っている)と分類するからである。左翼の劣等感は非常に深いため、彼はあらゆる階級分け、成功や優越と失敗や劣等といった階級分けに耐えられない。このことは、多くの左翼による精神病の概念やIQテストの施行に対する拒絶にも表れている。左翼は人間の能力やふるまいに関する遺伝子的な表現に反対する。というのも、それらの説明は人々を優越者と劣等者に区分するからである。左翼は社会に対し、個人の能力やその欠如の責任があるとする。したがって、もしある人が「劣っている」のであれば、それは彼の間違いではなく、社会の問題であり、適切に育てられなかったからなのだ、ということになる。

 

19.左翼は一般的に、劣等感によって誇大主義者や、エゴイスト、いじめっこ、セルフプロモーター、無慈悲な競争者となるタイプの人々ではない。この種の人間は、完全に自分に対する信頼を失っているわけではない。彼は自分の能力の感覚や、自己価値においてマイナスではあるものの、彼はより強くなれると信じており、そのために彼は喜ばしくないふるまいをする。しかし左翼は行き過ぎた。彼の劣等感は、自分を貴重なものと考えられないほど深く根ざしている。したがって、左翼は集団主義なのである。彼は自分が所属していると考える大きな組織や、巨大な運動に所属することによって強くなったと感じる。


20.左翼戦術のマゾヒスティックな傾向に注意せよ。左翼は車両の前に横たわって抗議したり、警察や差別主義者に故意に攻撃させたりする。これらの戦術は効果的かもしれないが、多くの左翼主義者にとってそれは方法ではなく、結果である。彼らはマゾヒスティックな戦術を好むのだ。自己嫌悪が左翼の特徴である。

 

21.左翼は、彼らの運動は同情や他の道徳原則によって動機づけられていると主張するだろうし、過剰社会化タイプにとって、道徳原則が重要な役割をもっている。しかし同情や道徳原則は、左翼運動の主要な動機とは成りえない。敵意こそ左翼行動の決定的な要素である。権力への欲望も同様である。さらには、理性的に計算されていないかなりの左翼行動は、左翼が助けたいと主張する人々を利していない。たとえば、もしだれかがアファーマティブ・アクションが黒人にとって良いと信じているとして、敵対的、ドグマ的な言葉でアファーマティブ・アクションを要求することは理にかなうだろうか? 明らかに、交渉的で和解的なアプローチをとった方が生産的である。少なくとも、アファーマティブ・アクションが白人にとっての差別だと考える白人を説得する上では。しかし左翼運動家は、彼らの感情的欲求を満たすことができないので、そういった手法をとることがない。黒人を助けることは彼らの目標ではない。そのかわりに、人種問題は彼らの権力への欲求不満や敵意を表現する言い訳として奉仕するのである。そうすることによって彼らは実際的に黒人を傷つける。というのも活動家たちの白人マジョリティに対する敵意は、人種への嫌悪を強めるからである。

 

22.もしも私達の社会に問題がまったく存在しないとしても、左翼は大騒ぎをする言い訳として、問題を「発明」するだろう。

 

23.これは左翼とみなされる人々に対する正確な説明ではない。大まかな指標でしかない。

 

まとめ

腑に落ちる部分が多々だし、訳していて耳が痛いところもあった。

  • 左翼は狂っている。
  • 左翼の根本的で、しばしば抑圧された動機は「劣等感」と「過剰社会化」である。
  • 左翼は、マイノリティ集団に対する侮蔑に非常に敏感である。弱い、差別された、抑圧されたマイノリティ集団に自己同一化しているからである。
  • 実際には左翼は、マイノリティではなく、特権的な地位にある。
  • 左翼は「成功」や「優越」という概念に徹底的に反対する。
  • 左翼は競争を嫌うが、それは自分が負け組だからである。
  • 左翼は理性を嫌悪、直情的な訴えに終始する。
  • 左翼は社会に対して自分の問題を解決し、欲求を満たしてくれることを望んでいる。
  • 左翼は革命家というよりは集団主義的で、大集団や大規模デモの一員となることで自己信頼を取り戻す。
  • 左翼はマゾである。マゾヒスティックな喜びのために、社会的マイノリティを利用する。
  • 左翼の目的は自己の快楽であり、マイノリティや社会問題はどうでもよい。

左翼はマゾヒズム?

カジンスキーの左翼批判は強烈だと思う。彼が糾弾しているのは、左翼の偽善性である。つまり、彼らは結局、自分のやましい欲望のためにしか行動していないのである。

 

この傾向は、世の中の「左翼」と呼ばれる人、坂本龍一や大江健三郎、朝日新聞が、なぜああもダメなのか、ということを説明している。

 

デモ行進に参加するタイプの左翼はマゾヒストが多いかもしれない。デモにはほとんど効果がないからである。むしろ、過激なデモ行進は世間の反発を招くから、逆効果かもしれない。

 

無駄だとわかっているのに、無意味なことをして、悲嘆に暮れる。それはマゾヒズムである。「私達はがんばった! でも主張は受け入れられなかった! 悔しい!(でも気持ちいい)」。この快楽を左翼は求めている。

  

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もちろん左翼のすべてがこうというわけではないし、デモのすべてが偽善的なものではない。でも、メディアに登場する「有名な左翼」のほとんどはこんな感じのように思える。

 

結局のところ、「左翼」によっては何も問題は解決されないだろう。

 

 

上の文章を書いていて強烈に思い出したのは三島由紀夫である。彼もマゾヒストであり、極右の真似事をしたが、結局は「気持ちよく死にたかった」だけであった。

ゲイとマゾヒストとしての三島由紀夫 - 齟齬

 

もうひとつ思い出すのは、キリスト教道徳である。カジンスキーの文章は、かなりニーチェの影響が見られる。キリスト教とは、弱者のための宗教である。服従を是とし、敗北や弱いことを肯定し、「殉教」を美徳とさえする。マゾヒズムは、「奴隷道徳」とかなり近いニュアンスなのかも。

 

 

爆弾魔、カジンスキー。狂人と扱われることの多い彼だが、主張については非常に明晰で驚く。というかINTJ~な文章ですな。左翼のもうひとつの病、「過剰社会化」についても訳していきたいです。