齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

資本主義は鬱病である

毎日強盗に遭っている人を助ける方法とは?

 

強者が弱者から奪うのが資本主義です。

 

労働者が働いて10万円の利益を生みだします。このうち、経営者が8万円を持っていきます。2万円を労働者の賃金にします。

 

労働者は10万円分働いたのに、手元には2万円しか残りません。

これが資本主義です。

 

「そんな大げさな」

 

と言う人がいるかもしれませんが、日本はそうなっています。*1 私たちは、労働時間のほとんどを、自分以外の利益のために働いているのです。

 

さて、毎日のように強盗に遭う人が抑うつ的な気分になったとして、それは「病気」でしょうか? それは自然の反応ではないでしょうか。

 

労働者は、強盗に遭っているようなものです。

 

f:id:mikuriyan:20180517011534j:plain

強盗被害者の例

黒川依「ひとり暮らしのOLを描きました」より

 

鬱病の原因とメンタルヘルスの役割

 ロンドンで鬱病になったOLさんの記事より。

Living with depression under capitalism | rs21

私は自分の鬱病を、資本主義に深く根ざした原因に辿っていった。

 

まずはじめに、私の鬱病の大部分は、超資本主義的な都市であるロンドンでの心理的物質的な経験によって引きおこされている。

 

ロンドンは利益追求のための都市であり、富裕層にさらなる富を移転するために継続的に環境が再構築されている都市環境である。

 

長い労働日の間、労働者階級は高密度のタワーブロックの小さなアパートに住み込み、地主の利益を最大化している。

 

……私たちがもつべきだとされるすべての夢は高価で、私たちのほとんどは理想的な生活を送るための金や自由を一度も見ることがない。

 

私の抑うつ的な気分は、経済的な不安定さや、他者から疎外されている感覚、道端で出会う人々や人間関係における抑圧やハラスメントからきている。

 

このシステムの中では、ときに不幸とならないことがほとんど奇妙と思える。

 

東京とよく似ていますね。 

 

雇用者はジレンマをかかえています。労働者を可能な限り搾取したい。でも、搾取すればするほど労働者は精神的・肉体的に不健康になり、搾取が困難になります。

 

メンタルヘルスケアは、そのジレンマの良い解決策となりそうです。

 

国家の公的医療は、それが社会的な再生産を目的とする限りは、効率的に人口を生みだし、健康的な労働者にすることを意図する。

 

肉体的疾患の場合、このことは価値中立的である。私が自分の足の骨折を治すことは、私の利益でもあるし、経営者の利益でもある。

 

しかし、メンタルヘルスとの関係においては、より不吉な兆候となりうる。「健康」と定義されているものは、しばしば「幸福」や「成功」といった価値概念に基づいている。そして明らかに政治的動機をもっているがゆえに労働者として機能しない人は「病気」だと診断される。

 

私の鬱病は、少なくとも部分的には、資本主義下における労働者階級の女性としてのゴミ・クオリティーな人生を反映しているものだった。

 

したがって、薬やカウンセリングによって自分を麻痺させようとする試みは、実際には、私をひどく不幸にしている状況の中で、人生を耐え抜くようにする方法だった。メンタルヘルスの治療は、労働者の機能を維持するための生―権力biopoliticalの形態だと言える。

(同)

 

メンタルヘルスは患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)に貢献しているのではなく、単に壊れた生産機械を修復しているだけなのかもしれません。

 

精神医学はだれに奉仕するか

抑鬱、不安障害、適応障害、依存症。これら治療することは、本当の解決にはなりません。

 

真の原因は、多くの場合、個人に内在するのではなく、社会的なものだからです。例えば、もしも搾取がなくなり、一日の労働時間が2時間だけになったら鬱病や社会不安の統計はどうなるでしょうか。

 

メンタルヘルスの治療とは、「毎日強盗にあって落ち込んでいる人」を「毎日強盗にあっても元気な人」に作り変えることにすぎません。

 

それはいささか不自然な人間です。――不自然な人間をつくるためには、不自然なケミカルを脳にはたらかせる必要があります。そのために抗不安薬や抗うつ剤が処方されます。

 

f:id:mikuriyan:20180517015146j:plain
Luke Chueh 'The Prisoner Part 2'

 

グロテスクな社会だと思いませんか?

 

精神医学はだれに奉仕するか。 批判的に考える必要がありそうです。

*1:日本の剰余価値率(剰余価値率 - Wikipedia)は300~400%と言われています。つまり、一日8時間働くとしたら自分の賃金のための労働は1.25~2時間ということです(税金を考慮したらもっと低いですが)。