齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

アナーキストとリバタリアンの違い

自由を愛し、あらゆる抑圧を否定する。この点でアナーキストとリバタリアンは同じです。

 

でも、いまいち本質的な違いがわからないので調べてみました。

 

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RedditのWhat is the difference between a Libertarian and an Anarchist?の回答が簡潔でわかりやすいです。

 

リバタリアニズムは自由を最大の目標とするのに対し、アナーキズムは国家のない社会が国家のある社会より良いとする哲学である。

 

リバタリアンのある学派は国家を自由を最大化するための必要(ただししばしば「必要悪」)と考えられるが、中には国家を不必要で自由を制限するものと考えるものがいる。(つまり、リバタリアンのアナーキストも存在する)。

 

ほとんどのアナーキストは自由を肯定的に考えているが、必ずしもそれが目的ではない。

 

  • アナーキスト=国家の廃絶
  • リバタリアン=自由が第一

 ということでしょうか。アナーキストとリバタリアンってぶつからないんですね。リバタリアンのアナーキストがいれば、アナーキストのリバタリアンもいるようです。でも、自由を求めないアナーキストも稀だと思いますが。

 

他にもおもしろい説明があったので紹介します。

1948年生まれの科学者、Harry氏のサイトChaos Parkより。

Libertarian or Anarchist?

リバタリアンとアナーキストの違いは?

伝統的な答え

リバタリアンは極度に制限された政府を求める。
アナーキストは政府がないことを求める。

 

おもしろ回答

リバタリアンとアナーキストは、ヌーディストと裸族である。リバタリアンは中産階級で組織的であるため、比較的狂っているように見えない。

 

政党の解答(Andre Marrouによる)

アナーキストは極端なリバタリアンである。社会主義者が極端な民主主義者であるように、ファシストが極端な共和主義者であるように。

 

直球の解答

リバタリアンは自由市場、私有財産、資本主義を信じている。これら3つを信じるアナーキストが自らをリバタリアンと呼ぶ。

 

この説明だと、リバタリアンは「最小の政府と資本主義を肯定するアナーキスト」と言ったところでしょうか? 

 

「小さな政府」を求めるのがリバタリアン

 あとはQuoraの解答を見てみましょう。

What are some major differences between libertarians and anarchists? - Quora

「リバタリアンとアナーキストの主要な相違点とは?」Allen Taylor氏の2010年の解答。

 

細かい違いがある。しかし両者の違いは、政府との関係によってまとめることができる。

 

アナーキストは政府権力に対抗する。終わり。アナーキストはあらゆる形態の政府を不必要とみなし、廃止することを望む。

 

リバタリアンはより定義が難しいが、一般的に政府に対する見方は多くのアメリカ建国者たちと似ている。政府を必要最小限に抑えることを目的としており、クラシック・リベラリズムと呼ばれる。そこでは政府は紛争を解決し、国防を提供し、社会秩序を確立するレフリーとして働く。それ以上はない。

 

……結論は、アナーキストは政府を好まず、それを廃止することを求める。リバタリアンは政府が好きではないが、権力を濫用しない限りはそれを許容する。リバタリアンの主な教義は、政府が市民の自然権を侵害すべきではないということである。……

 

リバタリアンは政府governmentを否定しません。アナーキストはそれを否定します。自己統治の哲学ですから。

 

リバタリアンはself-control(自己管理)、アナーキストはself-govern(自己統治)の違いでしょうか? Harry氏の指摘どおり、アナーキズムの方がリバタリアンよりも極端というか、徹底している気がします。

右派リバタリアンと左派リバタリアンの違い

ちなみに20世紀なかば、アメリカで右派リバタリアンが登場します。右派リバタリアンは、左派とぜんぜん違うようです。

 

What is the Difference Between Libertarianism and Anarchism? - Black Rose Anarchist Federationより一部抜粋。

 

19世紀、20世紀においてリバタリアンは「人生を自分で管理し、自らに影響を与えるものに対し決定を行い、労働と共同体において自ら管理を行い、自らの能力を発揮し、自己管理の能力を手に入れる。」というような意味だった。

 

しかし1950~1960年代のアメリカにおいて、アメリカ右翼のリバタリアニズムが生まれる。ここでリバタリアンの意味がネガティブな意味に変わった。つまり、強制や抑圧の廃止を意味するようになった。

 

右派リバタリアンにとって、雇用者のために働くことや、上司に命令されることは、相変わらず自由なのだという。だれも銃を突きつけて働くように仕向けていない。だから強制は存在しないというわけだ。アナーキストや左派リバタリアンから見ると、この視点は「自由」の極めて貧しい定義である。

 

右派リバタリアンにとって、国家の存在は許容できる。国家は少数の資本家や雇用者階級を守るからだ。……右派リバタリアンは、失業給付、最低賃金法、社会保障、健康保険などに反対する。

 

アイン・ランド的な。

 

右派リバタリアンとネオリベラリズム(新自由主義)はほとんど同義のようです。

「新自由主義ってぜんぜん自由じゃないよな~」と昔から思ってたのですが、こういうことなんですね。右派リバタリアニズムは、「個人」の自由というよりは、「資本」の自由を意味するのでは。

 

ちなみにアナルコ・キャピタリズムも右派リバタリアンの一種とされています(Wiki)。多くの場合アナーキストがアナルコ・キャピタリストをアナーキーだと認めないように、リバタリアンの右派と左派には深い断絶がありそうです。

 

左派リバタリアンやアナーキストにとって、雇用者のために働くことを余儀なくされることは、抑圧の形態である。というのもそのことは、自己管理を許さず、踏みにじり、終わらない仕事に悩まされる賃金労働者のポテンシャルの実現を妨げるからである。

 

左派リバタリアンは、無料の保健医療、教育、公共交通機関などを主張する。これらは労働者が直接管理すべきだとする。

 

そりゃそうですよねえ。私たちは否応なく労働に従事させられているのであって、好き好んで働いている人なんていないでしょう。

 

左派リバタリアンは社会保障を優先するようです。ただし、リベラリストが徴税を認めるのに対し、リバタリアンは労働者との繋がりによって解決するようです。つまり、徴税は富の収奪ということです。

 

左派リバタリアンの税金に対する考え方は、すばらしい。仲良くなれそうです。

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ちなみに、Wikipedia(日本語)では「リバタリアン左派はきわめて少数派」と書かれています。

 

まとめ

私的なまとめなのですが。

 

左派リバタリアン

  • 自由を追求する
  • クリスチャン多し
  • 治安、社会保障、国防のための「小さな政府」を求める
  • 労働者同志の結束による社会保障

 

アナーキスト

  • 国家の廃絶を理想とする
  • 無神論
  • 企業、学校などあらゆる支配の拒絶
  • 互酬に基づく相互扶助

 

というような違いがありそうです。リバアリアンにもかなりの部分共感できますが、理想としてはアナーキズムかな。

 

調べてみて気づいたのですが、リバタリアンとアナーキストの分水嶺は、「権力を濫用しない政府が実現可能か」にかかっていそうです。

 

「権力を濫用しない政府」……史上かつてそのような政府が存在したのか。また、今後存在しうるのか。その答えによってアナーキストとリバタリアンがわかれそうです。

 

哲人王のような支配者がいればいいのですが。現実はどうでしょうか。