齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

真島直子がいい感じ〜名古屋市美術館

私の新しい住処は、愛知県の冴えないところなのだが、おもしろいところを開拓すべく美術館へ行った。目指すは名古屋市美術館

 

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東京や大阪の美術館と比べると、しょぼいアットホームな雰囲気です。

真島直子いいですやん、となった。 

特別展は真島直子の「地ごく楽」展。ノーマークの作家でしたが、よかったです。

 

真島の鉛筆画。非常に大きな鉛筆画だが、そこには無数の小さなオタマジャクシや輪っか、枝やひだのようなものが散りばめられている。形がない。焦点がない。規則がない。ただ、流れと動きがある。 

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見た瞬間の印象は、「豊かだな」ということ。無機的というよりははるかに有機的で、死物というよりははるかに生物に近い。

 

後期の鉛筆画は、タイトルが「密林」となる。たしかに密林だ。膨大な生命とエネルギーが存在する。また、無形の作品のなかに「精霊」といった人間の姿をしたモチーフが現れるようになる。

 

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密林(2010)、一部切り取り

脳と内臓を露出し、女性的な肩と乳房を持つ「精霊」は、死と再生の象徴だろう。有形的なモチーフの存在によって、動的で索漠とした空間のなかに焦点が生まれた。

 

多大な生を包容する密林には多大な死も存在することになる。エネルギーに溢れた密林は、かえって膨大な死と闇が広がる場所だ。「精霊」の存在によって、有形・無形、生と死、動と静のような対立する観念が生まれ、一層の深みが生れたように思う。

 

真島の作品は、モノクロの鉛筆画だけではない。オブジェも作っている。

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この作品は鯉をモチーフにしたもの。真島は餌に群がる鯉のぽっかりあいた「口」に魅せられて、本当はそれだけを作りたかったのだが、それでは何がなんだかわからないので、胴体も作ったという。

 

ぽっかりと開けた口は、食べ物を求めるようだが、それと同じくらいエロティックな印象も受ける。陰茎を求める女陰や、反対に女陰を求める陰茎のようでもある。ここでも、やはり、生命的なエネルギーの量感、「豊かさ」を感じる。

 

一方で、鯉の装飾は、奇妙で、汚く、グロテスクで、生理的な嫌悪感を催す。うじが湧いているようにも、血管が浮き出ているようにも見えるし、ところどころ皮膚が破れていて腐敗しているようだ。写真ではわからないが、全体としては生々しくギラギラしている。

 

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鯉の周囲に敷かれ、水面を表現したのだろうアルミ箔の上にはピーナッツやカシューナッツが散りばめられていた。これは死肉に群がるウジ虫のようにも見える。私たちがポリポリ食べるピーナッツと同じものが、腐肉を食っていると思うとおもしろい。

 

食欲と性欲は共に、自分以外の他者の生命を取り込む営みである。そういった生を求め大口を開ける「鯉」は、同時に死をも匂わせている。

 

そんなわけで……私がぱっとこのオブジェを見て出てきた言葉は、「ゾンビ鯉」だ。陳腐かもしれないけど、死と生が共存してるから、ゾンビっぽいなと。


いずれにせよ、非常にエネルギーをもったダイナミックな作品で、私はとても気に入った。

 

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真島の作品でもっとも好きなのはこれで、何周もぐるぐる回ってしまった。「精霊」のタイトルだが、脚線美とたっぷりとしたヒップがエロい(おしりは美術館で見てね)。水色のホースは、鯉の「口」と同様の意味があるのだろうか。臀部までいきつくホースは、食道~腸管のようにも思えるし、しましまの模様が平滑筋に覆われた気道のようでもある。ホースから垂れ下がったテープ?は女性の長い髪を思わせる。

 

写真ではわからないが、近くでは「腐ったゴミの塊」のように見えるのだが!全体としてみると色彩や造形や質感がはっとするほど美しい。欲しい。

 

まとめ

真島の作品は女性的で、男性的な要素の入り込まない作品だと感じた。真島の世界表現では、男性は女性の一部でしかないのかもしれない。男性は女性から産まれるからである。陰陽学でも、最終的に強いのは陰。あらゆる生と死を司るような、女性的な豊穣さを真島作品から感じた一日でありんした。

 

 

……真島直子はよろしかったのですが、せっかくなので美術館について書きたいことが。

1200円は高すぎるよ!

400円くらいにしてください。まあ、名古屋だけでなく全国の美術館に言えることなのですが……。