齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

文化資本とは何か―負け組が這い上がれない理由

なぜ勝ち組は勝ち続け、

負け組は負け組のままなのだろうか。

 

一体どこに差があるのだろうか。

 

ピエール・ブルデューは、文化資本という概念によって

「カネとコネ」だけではどうにもならない現実を素描する。

 

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文化資本の高そうな家族(エドガー・ドガ The Mante Family, 1889 )

 

 

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文化資本の低そうな家族(?) (ジャガイモを食べる人々 ゴッホ 1885年)

 

 

フランスの社会学ピエール・ブルデューは資本のタイプを次の三つに分けている。

Cultural capital - Wikipediaより) 

経済資本:自由にできる経済的な資源(金銭、資産、財産)
社会資本:知り合いなど持続的なネットワークによる実際的かつ潜在的な資源
文化資本高い社会的ステータスを達成する上で有利となるような教育

経済資本、社会資本をわかりやすく表現すれば、「カネとコネ」である。

これは特に説明は不要だろう。

 

では、文化資本とは何か。

はじめに、理解しやすい説明を紹介する。

文化が資本であることを理解するためには次のようなことを想起すればよい。劇場やコンサートは入場料自体はほとんどの人々がアクセスできる範囲にある。にもかかわらず現実にこれらを享受するのは特定の人々に限られている。クラシック音楽や古典劇を理解可能にするコードがなければ楽しくないし、意味不明である。したがって文化財を理解可能にするコード所有者には富めるものがますます富むという文化資本の拡大が生じる。資本の拡大は貨幣や財産に限らない。しかもこのような文化資本は教育達成(学力、学歴)に有利なコードとなる。上層階級の家庭には「正統」文化が蓄積されているからである。正統文化とは高級で価値が高いと見なされる文化である。クラシック音楽や古典文学は正統文化であり、演歌や大衆小説は正統文化から距離がある。“(竹内洋京都大学教授『日本のメリトクラシー東京大学出版会)”

 

さしあたって、「クラシック音楽や古典劇が楽しめない人」は、貧しい文化資本を持っているということができる。さて、Wikipediaに戻る。ブルデューはさらに文化資本を三つに分けている。

身体化された文化資本

文化や伝統へと適応することによって、意識的に獲得し、受動的に継承されるような知識のことである。財産と違い、文化資本は譲渡不可能である。時間の経過とともに獲得されるものであり、人びとのハビトゥス(人格や思考方法)によって印象づけられる。

また文化的影響もより受け入れやすい。言語的文化資本は言語とその関係性の習熟である。具現化された文化資本は、人びとのコミュニケーションや自己表現の方法として、国の文化から獲得される。

 

客体化された文化資本

人びとの財産を構成する(例:芸術作品、科学器具)。これらを持つことによって、経済的な財産を持つこと、文化資本の所有を象徴的に伝える効果がある。

一方で、芸術作品(客体化された文化資本)を持つ人は、先の文化資本の適切なコンセプトや歴史的基盤によってのみ芸術作品を消費(文化的意味を理解する)することができる。このように、たまたま売り手が買い手に作品の意味を説明する場合を除き、文化資本は単に絵画の販売によっては伝達されない。

 

制度化された文化資本

制度的で公的な文化資本。通常、学歴や専門職を指す。制度化された文化資本の最大の役割は労働市場(職業)にある。そこでは、人の一連の文化的資本を、定量的、定性的規準によって表現することが可能である(他者の数値と比較することが可能である)。制度的な認識は、売り手が自分の文化資本を買い手にアピールし、ヒューリスティック*(実用的解決)の役割を果たすことによって、文化資本から経済資本への転換を促進することができる。

ヒューリスティック:必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法、少ない努力で即座に結論を求める方法のこと

というかわざわざ訳さなくても良いまとめがあった。 →「文化資本

 

重要なことは、「文化資本は譲渡不可能」というところである。

非情なことかもしれないが、文化資本は基本的に生まれによって決まるのである。

 

文化資本のある家庭にありがちなこと

考えてみてほしい。  

  • お家に絵画が飾ってあった?
  • お家に百科事典や顕微鏡、天体望遠鏡があった?
  • ご両親はバッハやモーツァルトを聴いていた(エグザイルや浜崎あゆみではなく)?
  • 絵画や音楽、あるいはバレエなどの芸術的なレッスンを受けたことは?
  • ご両親は岩波文庫や学術書を読んでいたかな(「ジャンプ」や週刊誌ではなく)?
  • ご両親は大学卒で、知的労働者だったかな?
  • 家族で海外旅行に出かけたことは?
  • 正装して両親に連れられたパーティで、多様な人と関わった経験は?
  • 医学部や旧帝大に入るよう育てられた?

 

すべて当てはまった? おめでとう、君は文化資本を受け継いでいる。

ひとつも当てはまらなかった? 残念、来世に期待だ。

 

さて文化資本が実際的にどのように機能するか。

例えば、グーグルのような一流企業に入るとか、東大の教員となったとする。エリートで育ちの良い同僚たちとの間で、疎外感や場違い感を持つことなく自然体でいられるかどうか。あるいは大会社のお偉いさんや、官僚や政治家、成功した開業医などの集まるパーティで堂々と振る舞うことができるか。そういったところで文化資本が顕著に現れると思う。

また、企業面接(就活)でも文化資本が問われることがある。生まれ育ちの良さは重要事項である。最近では大学名だけではなく、小学校や中学校は私立か、ということを見る採用担当者もいるようだが、その表れだろう。

 

まとめ

結局のところ、「カネとコネ」だけでは二流の人間にしかなれない。カネとコネに加えて、文化資本を持つ者がこの世界を支配する。というか世界はそういう人のために用意されている。

この世は平等ではない。「生まれ」ほど不平等な格差はない。どうやっても取り返しがつかないのだから。

成功するためには文化資本が重要である。このことは知っておいて損はないだろう。  

 

 

 

 ちなみに私は一個も当てはまらない…… あ、天体望遠鏡はあったな。ほとんど見えなかったけど。