齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

天皇制は暴力と抑圧で成りたっている

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日本は「いじめ社会」である。

いじめは学校だけにあるのではない。

市民は警察にいじめられ、会社員は企業にいじめられている。

 

いじめ社会の根底にあるのは、法秩序や正義によってではなく、

暴力で他者を支配しようという考えに他ならない。

 

天皇制と暴力装置

で、日本でそういった暴力が起きるのは、天皇制のせいじゃね?

というおもしろい指摘があったので紹介する。

コーネル大学教授、酒井直樹の「死産される日本語・日本人」より。

 

結局、天皇制というシステムは、暴力と抑圧を不可欠の機制として成立している。つまり、自発的にこのシステムへと同和を行おうとしない者には徹底した嫌がらせが行われる以上、天皇制とは暴力と抑圧を統合の手段として使用する人々によって土台を支えられることを否定しないものということができる。さらに、社会における「いじめ」型の暴力は、天皇制の中核の権力を維持するために絶対に必要なものということができる。

たぶんこれを読んでもピンとこない人が多いだろう。

天皇制が暴力によって成り立つだって?

 

すべて国家は、暴力装置を保持している。

それは軍隊と警察である。

 

しかし天皇制における暴力装置は、警察や軍隊ではない。

右翼団体である。

 

試みに、「天皇制反対デモ」をやってみて欲しい。

リーゼントやスキンヘッドの怖いおじさんたちがわらわら集まってくるから。

 

 

実例。機動隊がいなかったらリンチでしょう。

www.youtube.com

 

彼らはただ怖いだけではなく、実際に暴力を振るうことがある。

昭和天皇には戦争責任があるのではないか」と主張した長崎市長が銃弾を受け、重傷となる事件があった。以下wikipediaから引用(長崎市長銃撃事件)。

マスコミ各社は「天皇の戦争責任はあると思う」と言う部分だけを強調する形で報道した。本島の支持基盤であった自由民主党は本島に対して発言撤回を求めたが、本島が「良心を曲げることはできない」として拒否したため、自民党長崎県連は本島を県連顧問から解任した。また多数の保守系組織が本島を非難し、多くの右翼団体(最大62団体80台の街宣車と260名の構成員)が街宣車長崎市に集結、本島に対して「天誅」を叫ぶなど大々的に抗議活動を行った。脅迫事件も13件発生し、6名が逮捕された。……最終的に本島は右翼からの要求を拒否し、この発言を撤回しなかった。発言から1年が経過し、昭和天皇崩御右翼団体による抗議活動も終息したかのように見えたため、市長側から要請で警察による身辺警護を解除して間もなく事件が発生した。

当時は昭和天皇の容態が悪く自粛ムードだったわけだけど、そういう背景で「天皇にも戦争責任はあると思う」と発言すると、とたんに「いじめ」がおきることがここからわかる。襲撃した右翼だけではない。マスコミ、政党、保守系組織などもいじめに加担している。

おもしろいのが、この殺人(未遂)犯は出所後、長崎市長選に立候補している。被害者ではなく加害者が、である。たぶん自民党のバックアップがあったことは想像に難くない。当選したら喜劇なのだが、落選している。残念。

 

ところで私はひどく気になることがある。

皇室はこの事件に対して、どうコメントしたのだろうか? 

調べても見つからないが、「日本は民主主義国であり、思想と発言の自由がある。天皇および皇室は右翼団体の暴力による言論封殺に強く抗議する」……このような発言をしていないことは確かである。

おそらくこの殺人事件を黙認したのだろう。ここに、「天皇制とは暴力と抑圧を統合の手段として使用する人々によって土台を支えられることを否定しないもの」という酒井の記述との一致がある。

つまり天皇制のタテマエとしては、「右翼が私らの知らんところで勝手に熱狂して事件を起こしとる」とすまし顔なのだが、事実上は右翼による暴力的抑圧的支配によって体系が維持されているのである。

 

ちなみに王制は現在、イギリスやタイでも続いているが、その維持は様々である。イギリスでは、王室への誹謗中傷はごく普通になされ、襲われることはない。王室は金食い虫とされ、たびたびメディアや市井の批判を受けている。イギリス王朝はそのお陰でビジネスに卓越しており、不動産収入やブランドビジネス(王室グッズ)で稼いでいる。

タイの王制はかなりえぐい。不敬罪は懲役3~15年。朝の8時と夕方の18時に公共の場で王の賛美歌が流れて、その間は仕事中でも急いでいても立ち止まって直立不動しなければならない。動けば最悪不敬罪である。私も遭遇したことがあるが、ほんとうにピタッと止まるので異様だった。

日本の場合はどうかというと、「いじめ」つまり暴力と抑圧によって成りたっているというのが、本稿の趣旨である。

 

天皇制を問うことの必要性

天皇制がほんとうに必要か問うことはなされるべきだし、先の動画の反天皇制運動連絡会(反天連)の主張もあって然るべきだと私は思う。

というのも、憲法第一条には

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

とあるから、日本国民が「もういらね」と判断したら縮小あるいは廃止してもいいわけである。

皇室費は2016年度予算案で約61億円、宮内庁費は109億円、皇宮警察本部人件費は72億。皇室の維持には少なくとも240億円以上はかかっており、決して安いものではない(エリザベス2世が泣いて羨む大金だ)。皇室は税金で維持されている公共物なのだから、「もうやめようぜ」という意見があっても良いと思う。

 

しかしながら、上の動画の反天連(反天皇制運動連絡会というらしい)への反応は、以下のようなものである(Youtubeのコメント、他)。

  • 日本人の根幹たる思想、文化が受け入れないなら出て行けよ!天皇制廃止だぁ?ふざけるな!!
  • 日本は昔から天皇、神社は存在しています。それが嫌なら日本から出て行ってください、ぐだぐだ言わないで、日本人でないでしょうから。
  • 天皇廃止は日本という国その物への否定です。……日本人で天皇廃止を言う方は無知か日本が嫌いな方です。そんな人達は日本から出るべきだと思います。
  • 私は平和を希求する日本国民として毎日日本の為平和の為に御祈りをされている天皇陛下を罵っている方がいることにこの上ない憤怒を覚えました。
  • 皇族批判なんてしている人は在日くらいですよ。日本人はすべて皇族を崇拝していますよ。日本の伝統というか日本が日本である証という処ですから。

 

「異常」なものではない。日本のネットでは見慣れた、普遍的なコメントである。

しかしながら、あらためて見ると極めて排外主義的な意見である。思想の自由、表現の自由からはかけ離れていると言う他ない。

酒井は同著で次のようにも書いている。

天皇制に包摂され、天皇制の末端で天皇と同一化を図る人々は、信条を共有しない人間に対して苛酷なまでに排他的になるのである。多様な要素の包摂・統合といったところで、全体との同一化の欲望を持つ者だけを吸引するだけで、同質化を拒む者には徹底した迫害が加えられる。

酒井の表現を借りれば、上のYoutubeのコメントは、まさしく「苛酷なまでに排他的」と言う他ないだろう。

 

 

長くなってしまったので、結論を述べる。

天皇制による暴力・抑圧システムが、日本のさまざまな権力諸関係を再生産しているのではないかと私は考えている。

上司―部下、企業―労働者、いじめっ子―いじめられっ子、親―子ども、警察―市民、ヤクザ―市民といった関係がしばしば暴力的・抑圧的であり、しかもそれが黙認されている。それが現在の日本社会の姿である。この権力関係の鋳型はどこにあるか。それは事実上暴力と抑圧によって成りたつ天皇制なのではないか。

……というとってもラディカルな考えである。

話が大きいのだが、酒井が述べたことを延長拡大すればこういう考え方もできるということである。