齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

警察による検挙率の誤魔化しはいかになされたか

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「日本の警察は優秀だ」と言われる。

その理由として諸外国と比べ高い検挙率がしばしばあげられる。

 

しかし元広島県警警部補の赤木文郎氏によれば、その数字はデタラメなのだという。

  

この検挙率そのものが、日本中の警察署でインチキな数字操作によって作り出されたものなのである。このことは警察署の中でも、知る人ぞ知る「基本的なデタラメ」の一つなのだ。

 

 

もっとも多い犯罪は窃盗犯であり、警察庁の統計によれば実に刑法犯の72%以上が窃盗犯である。したがって、検挙率はいかに窃盗犯の検挙率をあげるか、ということにかかっているのだが、この数字は多分に操作されうるようである。

 

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警察庁Webサイトより

 

赤木氏によれば、次のような手口のようだ。

時効寸前の窃盗事件があるとする。それと似たような犯行をした窃盗犯が逮捕されたとき、その犯人が行ったようにして、検挙票を作成するのだという。

 

あるとき、金庫破りの犯人を挙げたことがある。このときは、署内にあった古い金庫破り事件で、もう時効に近いものはみな、この犯人がやったことにして処理してしまった。このようにして、日本の警察では次々に事件は”解決”させられていくのだ。

 

自動車盗やオートバイ盗は、盗品現物が結構発見されることが多い……このように遺留品発見された自転車やオートバイについても、犯人が永久に捕まらないことを勝手に予想して、検挙票を勝手に作成してしまう。この場合も、自転車盗の犯人を現実に一人検挙した場合に、この犯人の余罪として遺留品派遣した自転車の検挙票を作成するのである。

 

一人の犯人に未解決の事件を3つかぶせてしまうと、合計四つの事件が解決したことになる。

 

つまり、ほんとうは10%しか捕まえてなくても40%の検挙率が達成できるというわけである。

 

考えて見てください。窃盗事件が四〇パーセントも五〇パーセントも検挙されるはずがない。……本当の数字を出したなら、とても二〇パーセントも検挙していないのではないかと思う。

 

また、検挙率の他に逮捕人員もノルマとして警察署に課せられているが、この逮捕人員についてもごまかしがあるのだという。

 

万引き犯人等についても、逮捕せず任意で処理したにもかかわらず、現行犯逮捕したように警察本部の操作参加に書面で逮捕報告する。さすがに留置したようにはせず、逮捕して釈放したように細工をする。

 

まあめちゃくちゃな水増しだが、平然と行われてきたのだろう。 

警察のように上意下達の世界では、過去の不正についてだれも指摘しない、全員が沈黙するという状態にあったことは想像に難くない。

 

窃盗犯の検挙率の推移

ただこの本は出版が17年前の2000年。古すぎる。

警察白書で最近の検挙率を見たら、グラフが異様に平べったくて笑ってしまった。

 

 

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グラフになっていない。これは故意だな笑

 

ぐいぐいうにょーん

 

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検挙率の推移が極めて歪であることがわかるだろうか?

 

平成元年から平成10年までは40%近くをキープ。この「窃盗犯40%」は当時の広島県警のノルマだったようだが、全国的にもそれくらいだったのだろう。

 

しかし平成11年~13年、急激に検挙率が下がる。平成13年次にはついに20%を割り19.1%。

「とても二〇パーセントも検挙していないのではないかと思う。」という赤木警部補の発言と一致する。

 

この時期になぜ実際の数字を公表するようになったのか。

実はこのことを示唆する描写が同著にはある。

 

数年前、広島県警察本部の偉いさんもこのようなデタラメの検挙率を出していてはいけないと気づいたのか、

「ある程度、本当に近い数字を出してみよう」

ということになった。それで、ある程度本当に近い数字を出したところ、検挙率が極端に低下した。

 

おそらくこの判断は、「本部のお偉いさん」の独断ではなかったのだろう。

警察全体にそのような是正に取り組む姿勢があった。

 

警察にとって2000年頃は最悪の不祥事の連続だった。

市民の警察に対する風当たりがもっとも強かった時期だろう。

 

昨年(1999年)9月の神奈川県警の覚せい剤使用モミ消し事件以後、京都府警の巡査長が行なった押収品覚せい剤盗み出し事件、佐賀県警の信号機メーカー贈収賄事件、新潟の女性監禁事件に端を発した新潟県警および特別監察での一連の不祥事など、全国の警察で次々と明るみに出た不祥事はここ約半年間で170件近くになる。(続く不祥事、問われる警察

 

そこで国家公安委員会から「お前らちゃんとせいよ」というお叱りの発表が出ていた。

警察刷新に関する緊急提言」。そこで警察内でも、警察刷新会議が発足。しばらくは法律を守り市民のために働く普通の警察になったわけだ。

 

平成11年から12年にかけて、警察をめぐる不祥事が続発し、国民の警察に対する信頼が大きく失墜したことを受け、国家公安委員会の求めにより、平成12年3月、各界の有識者を構成員とする「警察刷新会議」が発足しました。

 

市民からの警察批判の声が大きく、警察組織の近代化の機運が高まった。

だからこそ、赤木警部補のように一介の警部補による告発本が出版できたとも言えるだろう。

 

犯罪全体の検挙率の推移はどうか

  

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平成元年の検挙率の急落も気になるところ。 

 

検挙率は窃盗犯の検挙率とほぼ関連している。よっていびつな形も先の窃盗犯のグラフのとおりである。すなわち、窃盗犯の統計を操作することは、犯罪全体の検挙率を操作するに等しい

 

さて当の検挙率であるが、

  • 平成12年 19.8%
  • 平成13年 20.8%
  • 平成14年  23.2%

と推移している。

 

もっとも厳密な統計数値は平成12年のものだろう。

 

したがって、 検挙率20%程度がそれまでの実際の警察能力と判断すべきである。

実際、他先進国の検挙率はこの程度であって、特に低いわけではない。

 

ところで28年度の検挙率は33.8%と、ふたたび優秀な数値に戻っている。

警察史上最悪の平成12年度から、16年で検挙率が7割も増加したことになる。

 

このことは、警察が真摯に反省し、改善されたことを意味するのか。

それとも腐敗が再び蔓延したのだろうか。

 

私は残念だが、後者だと判断している。

一度腐った組織は、並大抵のことでは元通りにならないからだ。

警察を監視する機能がまったく働いておらず、そのような組織が腐らない方がおかしい。

 

前にも言ったがもう一度

 

警察は法律を守りましょう。

 

 

……

まあ、赤木警部補の言うことがすべて事実とは限らない。

少なくとも、犯罪全体の検挙率はほとんど窃盗犯の検挙率とニア・イコールであることは認識しておいて損はないだろう。

 

*ちなみに犯罪数が平成12年をピークに大幅に増加しているのは、

 小泉政権による失業率の増加の影響だと思われる。

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雑学的なことの数字を調べてみたデータベース「雑数」 犯罪件数と失業率より。