齟齬

社会とマイノリティの「齟齬」を描く御厨鉄のブログです。

日本はヤクザ国家か。悪人の支配する国

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日本はヤクザが支配しているのではない。

ヤクザのような連中」が支配しているのだ。

 

そんな日本の権力構造をQuaraのMartin Basinger氏が鋭く描く。

 

日本は高度に発展した模範的な国なのか、それとも落ち目の歪なヤクザ帝国なのか? 日本を判断する客観的で信頼できる方法は? 日本の特許の数の多さが楽観主義者が真実だと証明しているのではないか?

Is modern Japan a highly developed model country, or a crooked Yakuza empire about to fall? What are objective & reliable ways to judge Japan? Doesn’t e.g. the high number of Japanese patents prove the optimists to be true? - Updated 2017

 

という長い質問に対して、以下はMartin氏の回答。拙訳。

 

私はたぶん、「極端にネガティブな」意見になるだろう。

 

君の質問に答える前に書いておこう。

私の日本に関する意見がとてもネガティブに聞こえるのは、第二次大戦後に西洋社会で広く受けいれられたイメージが大部分が大げさな賛美だからという可能性を君は考えているのか。

 

たとえば、ほとんどの人が次のような意見を持つ。「日本には犯罪がない」。そしてだれか私のような人間が「それは真実ではない。たくさんの犯罪が日本にはある」というと、それは「極端にネガティブ」で、「バッシング」だ、と受けとめられる。単に真実を述べたにすぎないのに。

 

君はこの法則を、日本文化や日本人に関するさまざまな日本の事柄に当てはめることができる。多くの西洋人にとって日本のイメージは基本的におとぎ話の国なのだ。人びとはほんとうにこの幻想を手放さないように見える。生活はトラブルフリーで、悪い人間がいない、「最果ての」「エキゾチックな楽園」(ヤクザのような悪い人がいるとしても、彼らは災害時には助けてくれる)。

 

もしだれかが日本は「模範的な国」だと結論するとしたら、私は彼の知性を尊敬することはできない。なぜなら近代日本のことを学習した人にとって、そのような発言は不可能だからだ。

 

そのような人は、明治初期から日本人が創りだし、アメリカが第二次大戦後に承認した神話をただ信じているだけだ。それはまさにネイティブアメリカンの歴史に関する情報がディズニー映画の「ポカホンタス」しかないようなものだ。そしてだれかほんとうのネイティブアメリカンを知る人が批判したら、彼は「極端にネガティブ」なのだ。

 

このおとぎ話はなんとか日本の「オフィシャルな」話になった。フィクション作品であるルース・ベネディクトの「菊と刀」や映画の「キル・ビル」やその他の教育の貧しい人に人気な作品のアマルガムによって。

 

では、日本は「落ち目の歪なヤクザ帝国」なのだろうか? それは真実だが、ヤクザは日本の権力構造の使い勝手のいい枝に過ぎない(他の枝である政党や「選挙によって選ばれた政府」の)。彼らは権力構造のすべてではない。古い財閥はまた、オフィシャルにはもう財閥はもはや存在しないとされているが、依然として影響力を持つと考えられている。

 

近代日本の権力構造はヤクザをモデルとしている。不透明さ、階級制、表は尊敬されるように振る舞い、裏では汚いことをする、など。しかし、だからといって日本を「歪なヤクザ帝国」とは導けない。犯罪組織のようなはたらきは、すべてがヤクザによって行われているわけではない。日本のヤクザは、より大きいヤクザ的組織の主要な一部に過ぎない。この答えが助けになるといいが。

 

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映画「ポカホンタス」。白人至上主義的な人種差別の一例であり、

インディアンに対する偏見を助長すると批判されている。( ポカホンタス (映画) - Wikipedia

 

最初に。

菊と刀」を「無教養が読むフィクション作品」とばっさり切ったのには笑った。

 

フィクションと言えばフィクションだろう。ルースは日本を一度も訪れることなく日本人論を書き上げたから。

また同書は大戦中の「敵国研究」がベースであって、「当時の日本人像」はわかっても、通時的な民族性を描写するものではない。本人も生徒に「菊と刀」は読むなと言ったといわれる。

 

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トリビア。若い頃のルース・ベネディクトはとても美人で、

同じく文化人類学者であるマーガット・ミードとは恋愛関係にあった。

 

「明治初期から幻想が産みだされた」という指摘は卓見と言うほかない。私は日本が好きだが、明治以降の日本に生まれたことを不幸に思う。たぶん明治以前の日本はここまで腐っていなかったし、今よりも自由気ままに生きることが可能だっただろう。

 

Martin氏はまた、権力構造を鋭く描いている。彼の言うとおり、ヤクザが日本を支配しているのではない。ヤクザは道具に過ぎない。支配者層全体がヤクザ化しているのである。これは日本人ならよく理解できることだ(B層除く)。

 

政治家がヤクザで、財界がヤクザで、マスコミがヤクザで、警察がヤクザ、宗教がヤクザ。

 

気持ちのよいくらい、全員悪人である。

 

 

 

Martin氏、なぜ日本にここまで詳しいんだろうと思ったら、彼の出身であるイェール大学は日本研究が盛んらしい。 

幕末に来航したペリーの黒船に当大学関係者が随行して以来、東アジア研究が盛んであり、とりわけ朝河貫一が築いた日本研究は、現在も続いている。(イェール大学 - Wikipedia

丸紅で働くくらいだから専攻は日本研究だったんだろうか? 多くの外国人と同じように、はじめはJapanophile(日本信者)だったのかな、と思うと少し可哀想である。